星野道夫のいのちの言葉と写真

    「目に見えるものに価値を置く社会と、目に見えないものに価値を置くことができる社会の違いをぼくは思った。そしてたまらなく後者の思想に魅かれるのだった」 「脆さの中で私たちは生きているということ。言い換えれば、ある限界の中で人は生かされているのだということを、ともすると忘れがちなのような気がします」       現在、千葉県市川市の「芳澤ガーデンギャラリー」で開催されている星野道夫展に行ってきた。 星野道夫さんが、「地球交響曲(ガイアシンフォニー3番)を撮影中にカムチャッカで熊に襲われて亡くなってもう20年、、、 時の流れの速さを改めて感じる。 日本の自主上映史上、延べ、240万人以上を動員したという記録を持つこの映画は、 日本人の意識が、目に見える世界から、目に見えない世界に意識を向けるようになった大きなきっかけだった。 時代のエポックメイキングの一つだったと思う     あわただしい、人間の日々の営みと並行して、もうひとつの時間が流れていることを、いつも心のどこかで感じていたい。 ふと自分が立ち止まりたい時に…

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私のいのちを励ましてくれる、より大きないのちの源からの声

  私のいのちを励ましてくれる、より大きないのちの源からの声。 それに耳を澄まし、そのかすかな大気のそよぎに共振するように、 私のいのちは少しずつ華やぎを増してくれる。 癒しようもないほどに病んだ肉体とは裏腹に、 今を必死に生きようとしている私のいのちの感触を、 心の奥に探りあてる。     生命科学者であり、35年もの長きに渡る難病で苦しまれた作家、 柳澤桂子さんは、ベストセラー『生きて死ぬ智慧』般若心経訳で有名ですが、 上記の文章は、柳澤さんの『いのちの日記』(小学館)のプロローグにあった文章で、 「ああ、私、この感じすごくわかるなあ」と思って、共感しながら読ませて頂いたのです。     柳沢さんは、難病に苦しむ過程の中で、次第に短歌を詠むようになりました。 その短歌がとても心に響く言葉ばかりなのです。 死に対峙せざる得ない状況に立たされた人間は、生命の本質に否が応でも向きあうようになるものです。 生命の本質が見えてくるにつれ、いらないものが、自分の中からどんどんそぎ落とされ大切なものだけが残るのだと思います。 短歌や俳句という、一…

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仏陀とキリストとソクラテス

  歴史上の偉人、聖人たちは、後世の人たちによって、どんどん神格化され、脚色されていく傾向はどうしてもあるのでしょう。 しかし、当時、身近にいた人たちにとってみたら、 「それ、ちょと違うから」 「そこまでじゃないから」 という部分もたくさんあるのだろうなと私は思います。 女性視点、妻視点から見た、釈迦とソクラテスを描いた、瀬戸内寂聴さんの『釈迦』や、池田晶子さんの『さよならソクラテス』シリーズは、そういう意味でとても面白い本でした。 『さよならソクラテス』シリーズでの妻クサンチッペとソクラテスの会話は実に痛快。 私は、「クサンチッペに1票!」と何度も言いそうになりました。 「クサンチッペ=悪妻説」を池田晶子さんは見事にひっくり返しました。 「もしかして、哲学って面白いの?」 と思わせてくれたという意味で、クサンチッペと池田晶子さんのソクラテスへのリスペクトはすごい。 寂聴さんの『釈迦』は、入魂の仏教小説です。釈迦の魅力と人生を余すことなく描き切っています。 お二人の書かれたものは、もちろんフィクションですから、事実とは全然違う部分も多々あるのでしょうが、物語として面白い。 女…

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自分の存在を全面的に肯定する、「はい」

photo 1   どういう巡り合わせか、大学の教壇に立っている。 かつて、あらゆる授業で居眠りをしていた自分が、こんなところに立っていていいのだろうかという戸惑いはあるが、ひとたび学生たちと向かい合えば必ずさまざまな発見と感動があり、授業とはこんなに楽しいものかと、教える側になって初めて知った。 授業の初めに、出席を取っている。 「○○さん」 「はい」 単なる出欠の確認であるが、繰り返すうちに何か奥深いものを感ずるようになった。 教師が名前を呼び、学生が返事をする。 単純なその応答の中に、人間存在の本質が秘められているような気がする。 学生たちの返事は、それぞれ個性があって味わい深い。 大きな声、小さな声。自信に満ちた声。自信をもてない声。 たったひとことの「はい」でも、その声はその人の内面をよく表している。 本人は何気なく返事しているつもりでも、そのときの体調や精神状態で声は変わってくるし、何よりその人が本当に自分自身を受け入れているか否かで、返事の質は決定的に変わってくる。 名前を呼ぶということは、その人がそこに「存在」しているかどうかを問う、ということである。 &nb…

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真理の大海は、いまだ発見の手がつけられないまま

  photo 1   こどもたちへの一番大切な贈り物一 美しいもの、未知なるもの、神秘的なものに目を見張る感性ー「センス・オブ・ワンダー」を育むために 子どもと一緒に自然を探検し、発見の喜びに胸をときめかせる。 レイチェル・カーソンの 「センス・オブ・ワンダー」(新潮社)という本の帯に書いてある言葉だ。 『センス・オブ・ワンダー』 なんと美しい言葉の響きだろう。 レイチェル・カーソンは、世界の歴史を変えた1冊と言われる「沈黙の春」の著者だ。 「沈黙の春」は、地球環境汚染の実態を世に先駆けて告発した本で世界的ベストセラーとして有名だ。 その彼女の最後の著作が『センス・オブ・ワンダー』だ。 まるで絵本のような雰囲気の本で、文章も優しくて、所々に入っている写真も美しい。 海洋生物学者であるレイチェル・カーソンは、この本の中でこんなことも言っている   科学者がしなければならないのは、 世界を愛することだ。 理解する前に自然界を愛することが最もたいせつなのだ。 もしもわたしが、すべての子供の成長を見守る善良な妖精に話しかける力をもっているとしたら、 世界中の子供…

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神は強情に不在し続け 私は強情に愛し続けた

    今ほど女性が自由に生き、自由に仕事をし、自己表現し、 自分らしい人生を生きている人など一部の女性でしかなかった時代一 存在も言葉も表現も尖りまくっていたかっこいい女性たちがいた。 女性の自立と、恋の挾間で揺れ動いていた20代の私が、 その圧倒的存在の魅力に痺れた一人の女性詩人がいた。 その名は、吉原幸子。 私は、自分の中にある激しさと情熱とパワーが、破壊と喪失の傷につながるたびに 「吉原幸子の詩集」に手を伸ばした。 最初はなんて美しく、カッコいい詩人なのだろうと惹かれた人なのだが、 詩集のページをめくるたびに、 この詩人の紡ぎ出す言葉の魂が当時の私の琴線に深く触れてきた。 そして、私は、彼女の言霊によって、私の本来の「生の色と音と香り」を思い出すのだった。 そして、歳月が流れ、今再び読み返してみると、 色もなく、香りもなく、言葉もない世界に突き抜けていくために彼女は、 この世の、色という“個の肉体と体験”の世界をとことん味わい尽くして、 それを言葉にして逝ったのだということがやっとしみじみとわかる年齢になった。 彼女は若き日の私にとって、 まさに「Power…

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