いじめ・仲間外れ・友達がいなかった学校生活  〜世界につながる窓としての宮沢賢治の世界〜

いじめ・仲間外れ・友達がいなかった学校生活 〜世界につながる窓としての宮沢賢治の世界〜

先日行った故郷の岩手は、氷点下10度で、例年よりもすごく寒く積雪量も多かった。

一面の銀世界はとても美しくて、静寂な世界でしたが。

亡き母が冬になるとよく作ってくれた「ひっつみ」(地域によっては、「すいとん」「とってなげ」)と、ふのりと豆腐のお味噌汁が泊まった大沢温泉の朝食で出てとっても美味しかった。

母との故郷での思い出が走馬灯のように蘇ってきて時折目頭が熱くなりました。

亡き父も大好きだった、岩手が生んだ最大の天才、宮沢賢治にまつわる地を訪ね、賢治の残した言葉を噛み締めていました。

 

どんなお題を私が投げかけても

岩手行きの目的は昨年から始めた毎回ゲストを招いての岡部明美ライブトーク第6回目のYouTube収録のためでした。

今回は岩手県盛岡市在住の清水友邦さん(イーハトーブ心身統合研究所所長/『覚醒の真実』『よみがえる女神』著者)がゲストです。

今この時代、この状況だからこそ清水友邦さんと語り合いたい話がたくさんありました。

どんなお題を私が投げかけても、深く本質的な話をしてくださる友邦さんでした。

清水友邦さんとの対談内容は後日、

YouTubeにアップします。ただいま友邦さんが編集をしてくれています。

 

挫折と葛藤と失意にまみれる人生

宮沢賢治は岩手県を「イーハトーブ」と呼びました。

岩手県に行ったことがない人のために今回は対談だけでなく、

宮沢賢治ゆかりの地を私がご案内しているのを清水友邦さんが撮影していますので、

その映像もYouTubeで見られるようにします。

宮沢賢治は、『銀河鉄道の夜』『よだかの星』『風の又三郎』など、今この時代を生きている大人が読んだ方がいいようなたくさんの素晴らしい童話があります。

賢治は詩人でもあるのですが、私は『春と修羅』という詩集の中にある

「無声慟哭」「永訣の朝」を高校時代に読み、

生きる中で人が体験する心の氷河というものを感じ入り、涙しました。

しかし、賢治が生きている間には、そのいのちの仕事は全く評価されず、作品は全然売れなかったのです。

作品が評価され多くの読者の心を揺さぶるようになったのは、彼が亡くなった後でした。

宮沢賢治は挫折と葛藤と失意にまみれることの多かった人生だったのに、

彼の心の宇宙は至福に満ちていたのです。

 

次第に心を閉ざすようになった

私が宮沢賢治の世界に夢中になっていったのには大きなきっかけがあった。

私は小学校六年生の一学期に岩手県の釜石から、神奈川県の小学校に転校した。

私はそのクラスで初めて、いじめと仲間はずれにされる体験をした。

私がただ岩手県生まれであるということで都会の子にばかにされたのだ。

私は、大好きだった故郷の野山や川や海が汚されたと思った。

私の家族や大好きだった友たちまで侮辱されたみたいで、私は深く傷ついた。

私には、なぜ岩手が蔑(さげす)みの対象になるのかが全くわからなかった。

私はもって行き場のない怒りで、次第に心を閉ざすようになっていった。

友だちができないことなんか初めてだった。

 

友達のいない学校生活

友達のいない学校生活は、たとえ一年間であっても、

その頃の私には永遠に等しい一人ぼっちだった。

遠足ではグループでお弁当を食べることになっていたが、

お弁当の時間になるとクラスの女王様みたいな子が、

私が入っていたグループの子を全部自分のグループに連れていったので、

一人残された私は泣きながら母の作ってくれたオニギリを食べた。

あんなにしよっぱいオニギリは初めてだった。

ある日、一人で下校していると、川原ですぐ下の弟がやはりクラスの悪ガキ達に囲まれて棒でこづかれたり、けられたりしていじめられていた。

私はカーツとなり、近くにあった棒をもってその悪ガキたちめがけて振り回した。

頭に血が昇るというのはまさにあのことだ。

自分が仲間はずれにされていることよりも、弟がいじめられていることの方が許せなかった。

弟は私と違って内向的でおとなしい性格だったので、いじめられやすかったのかもしれない。

それ以降も度々弟がいじめられている場面に遭遇した。

 

言ってしまったらもっと自分が傷つく

でも私たちは、親には学校でいじめられていることや、仲間はずれにされていることは言わなかった。

子どもには子どものプライドがあったのだ。

言ってしまったらもっと自分が傷つくような気がした。

私は、学校から帰っても一緒に遊ぶ友たちがいなかったので、いつの間にか空想の世界で遊ぶこと、物語の世界で幸せになる方法を見つけたのだ。

私はこの頃から、岩手県の生んた最大の天才、宮沢賢治の書いた詩や童話を好んで読むようになった。

宮沢賢治は岩手をモチーフとして、彼の心の中の理想郷を「イーハトーブ」と呼んだ。

「イーハトーブ」という言葉の響きがとても好きだった。

みんなが幸せに暮らしている不思議な国を連想させる言葉だと思った。

私は賢治の感性、とりわけその独特の透き通った言葉、ユニークな表現力にとても魅力を感じた。

同じ岩手の風景を見ながら、賢治には世界がこんなふうに見えるのか、感じたことをこんな言葉で表現するのかという新鮮な驚き。

私は、中学、高校に行っても賢治の世界に惹かれ続けた。賢治のこんな言葉、こんな表現に出会う度に、私はドキドキした。

 

なべての悩みをたきぎと燃やし

 

「やさしい光の波が一生けん命一生けん命ふるえているのに いったいどんなものがきたなくてどんなものがわるいのでしようか」

「みんな時間のないころのゆめをみているのだ」

「青ぞらいつばい鳴っているあのりんとした太陽マジックの歌をお聴きなさい」

「なべての悩みをたきぎと燃やし なべての心を心とせよ 風とゆききし 雲からエネルギーをとれ」

 

 

すべてが私の中のみんなであるように

 

「僕 もうあんな大きな闇の中だって怖くはない きっとみんなの本当のさいわいをさがしに行く どこまでもどこまでも僕たちは一緒に進んでいこう」

「感ぜられない方向を感じようとするときは だれだってみんなぐるぐるする」

「ただそこから 風や草穂のいい性質が あなたがたのこころにうつって見えるならどんなにうれしいかしれません」

「すべてが わたくしの中のみんなであるように みんな おのおのの中のすべてですから」

「なにがしあわせかわからないのです 本当にどんなつらいことでも それが ただしい道を進む中でのできごとなら 峠の上りも下りも みんなほんとうの幸福に近づく一足ずつですから」

 

 

人間のまことの幸せとは何か?

賢治はきっと、野を渡る風の歌を聴きながら、花や樹や鳥や虫たちとも話をしていたのだろう。

自然にはみな心があって、宇宙は歌をうたっていると思っていたのかもしれない。

自然や宇宙の心、宇宙の物語、そのリズムやメロデイやハーモニーを言葉化したものが賢治の文学なのではないだろうか。

賢治は詩や童話を書く文学者であり、貧しき農民たちを救った農学者であり、星や鉱石を愛する科学者でもあった。

農学校の教え子たちには、一生忘れられない先生として慕われた教師でもあり、

自分の死の間際に、法華経の経を読みながら死んでいった信仰者でもあった。

「人間のまことの幸せとは何か」を生涯問い続け、世界の平和を願い続けた賢治。

友だちがびとりもいなかったその頃の私にとって、賢治の本は世界に開かれた窓だった。

今にして思えば、賢治は意識というものの広がりが無限であること、

自分の意識が世界を見ているのであって、世界が客観的に存在しているのではないということ、

自分の意識が変われば世界が変わることを私に教えてくれた初めての人だった。

 

「世界がぜんたいに幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない

自我の意識は個人の意識から集団社会宇宙へと次第に進化する

この方向は古い聖者の踏みまた教へた道ではないか

新たなる時代は世界が一の意識になり生物となる方向にある

正しく強く生きるとは銀河系を自らの中に意識してこれに応じて行くことである

われらまずもろともにかがやく宇宙の微塵となりて無方の空にちらばろう

われらは世界のまことの幸福を索(たず)ねよう

求道(ぐどう)はすでに道(タオ)である」

宮沢賢治『農民芸術概論綱要』より

 

 


 

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岡部明美
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心理カウンセラー、セラピスト、研修講師、作家、東海ホリスティック医学振興会顧問
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