星野道夫のいのちの言葉と写真

星野道夫のいのちの言葉と写真

 

 

「目に見えるものに価値を置く社会と、目に見えないものに価値を置くことができる社会の違いをぼくは思った。そしてたまらなく後者の思想に魅かれるのだった」

「脆さの中で私たちは生きているということ。言い換えれば、ある限界の中で人は生かされているのだということを、ともすると忘れがちなのような気がします」

 

 

 

現在、千葉県市川市の「芳澤ガーデンギャラリー」で開催されている星野道夫展に行ってきた。

星野道夫さんが、「地球交響曲(ガイアシンフォニー3番)を撮影中にカムチャッカで熊に襲われて亡くなってもう20年、、、

時の流れの速さを改めて感じる。

日本の自主上映史上、延べ、240万人以上を動員したという記録を持つこの映画は、

日本人の意識が、目に見える世界から、目に見えない世界に意識を向けるようになった大きなきっかけだった。

時代のエポックメイキングの一つだったと思う

 

 

あわただしい、人間の日々の営みと並行して、もうひとつの時間が流れていることを、いつも心のどこかで感じていたい。

ふと自分が立ち止まりたい時に、私は、星野道夫さんの写真と言葉に触れたくなる。

星野道夫さんの写真と文章には、

立ち止まらせる力があると共に

深呼吸の必要を思い出させる。

星野さんは、愛、神、光、宇宙というスピリチュアルな世界でよく使われるような言葉は全く使わないのに、

彼が撮り、語る、生命、存在、世界は、私にとって、全てがそれらの言葉と同義語なのだ。

「ぼく」という第一人称で語りながら、全体、普遍、生命の理、永遠を語る。

そこには、もはや、「ぼく」なるものはいない。

その語り口が私はとても好きだ。

物書きの端くれとして、私にとって星野道夫さんは、

まさに憧れの「Power of Being 」の人だ。

 

 

生命のつながり

潮が満ち、潮が引くように、命が生まれ、命が消えてゆく。

光や風をたよりに、内なるシグナルで動く野生の、はかなさ。

他の生命を奪い、取り入れることで、つながってゆく生命、

グリズリーもブルーベリーも人間もその循環のなかにいる。

 

 

 

「子供の頃に見た風景がずっと心の中に残ることがある。いつか大人になり、さまざまな人生の岐路に立った時、人は言葉ではなく、いつか見た風景に励まされたり勇気を与えられたりすることがきっとあるような気がする」

「偶然の一致に意味を見出すか、一笑に付すか、それは人間存在のもつ大切な何かに関わっていた。その大切な何かが、たましいというものだった」

 

 

 

「これから時代が大きく変わって行くだろう。だが森だけは守ってゆかなければならない。森は私たちにあらゆることを教えてくれるからだ」

「生きる者と死す者。有機物と無機物。その境とは一体どこにあるのだろう」

 

 

 

「森の主人公とは天空に向かって伸びる生者たちではなく、養木となって、次の世代を支える死者たちのような気さえしてくる。生と死の境がぼんやりとして、森全体が一つの意思をもって旅をしているのだ」

「自然の中で、人々の行動を律するさまざまな約束。それは一体、だれとする約束なのだろう」

 

 

 

人間のためでも、誰のためでもなく、それ自身の存在のために自然が息づいている。

そのあたりまえのことを知ることが、いつも驚きだった。

それと同時に、僕たちが誰であるのかを、常に意識させてくれた。

アラスカの自然は、その感覚を、とてもわかりやすく教え続けてくれたように思う。

 

 

 

人間の気持ちとは可笑しいものですね。

どうしようもなく些細な日常に左右される一方で、

風の感触や初夏の気配で、こんなにも豊かになれるのですから。

人の心は、深くて、そして不思議なほど浅いのだと思います。

きっと、その浅さで、人は生きてゆけるのでしょう。

 

 

 

「結果が、最初の思惑通りにならなくても、そこで過ごした時間は確実に存在する。そして最後に意味を持つものは、結果ではなく、過ごしてしまった、かけがえのないその時間である」

「私たちには、多くの選択などないのかもしれない。それぞれの人間が、行く着くべきところにただ行き着くだけである」

 

 

 

アザラシの皮で作ったウミアックを漕ぎ、氷の亀裂でできたリードという氷海の中で巨大なクジラを追う。

それは言葉では言い尽くせない体験だった。

何よりもうたれたのは、彼らが殺すクジラに対する神聖な気持ちだった。

解体の前に祈り、そして最後に残された頭骨を海に返す儀式、、、

それはクジラ漁にとどまらず、カリブーやムースの狩猟でも、さまざまな形で人々の自然との関わりを垣間見ることができた。

 

 

 

ある日ツンドラの彼方から現われ、風のようにツンドラの彼方へ消えてゆくカリブー。

通り過ぎてゆくその足音は、アラスカの原野が内包する生命という潮の流れのようだった。

 

 

 

「人は生きているかぎり、夢に向かって進んでいく。夢は完成することはない。しかし、こころざし半ばにして倒れても、もしそのときまで全力をつくして走り切ったならば、その人の一生は完結しうるのではないだろうか」

「かけがえのない者の死は、多くの場合、残された者にあるパワーを与えていく」

「大切なことは、出発することだった」

 

 

 

今回、「私に帰る旅』(学芸みらい社)を新版として学芸みらい社から出すにあたり、

どうしても星野道夫さんの写真を表紙に使わせていただきたく、奥様の直子さんにお願いして、その願いを叶えていただいた。

そのお礼を伝えるために編集の小島直人さんと市川にある星野道夫事務所を訪ねて直子さんにお礼を伝えた。

 

 

星野道夫さんの写真集には、花の写真も多い。

直子さんは、花の好きな人なのだろうと思っていたという。

しかし、ある日、星野さんから、

「花は、今まではそれほど好きでしょうがないというほどでもなかった」

「でも愛した人が花がとても好きな人だったから、だんだん花が大好きになって撮るようになった」のだと。

私はこの話を聞いて、星野さんの直子さんへの深い愛を感じて目頭が熱くなった。

私自身、人生のターニング・ポイントに立ち、これから先どの道を歩いて行けばいいのかわからなくなって途方に暮れていた時、

星野道夫さんの写真と言葉によって救われ、もう一度歩み出す勇気をいただいた。

そのことを、昨年6月に出した、

「約束された道」(学芸みらい社)の中で書かせていただいた。

 

 

先日、星野道夫さんの息子さんの翔馬くんが、

NHKドキュメンタリー・BS1スペシャル「父と子のアラスカ ~星野道夫 ~生命(いのち)の旅」

に出演した。この番組は、その後数回再放送されたとそうだ。

 

 

幼少時に父親を亡くした翔馬くんは、父親の記憶が全くない。

これまで父親の作品である写真集も本も全く見ようともしなかった、と直子さんは言う。

しかし、直子さんは友人から、

「息子にとって父親の存在は、自分が社会に出て何を本当にやりたいのか。どんな仕事をし、どんな生き方をしたいのかのモデルになる。親は自分の存在の根源だから。翔馬くんは今こそ父親の人生に触れるべき時なのではないか」

と言われ、以前から打診があった番組企画を話したところ、

翔馬くんは、「出演してみる」と答えたのだと言う。

 

20代初め、アラスカに渡り、村人たちと一緒に暮らし始めた頃の星野道夫さん

 

慶応大学在学中に神田の古本屋で偶然見たアラスカの写真集に目を奪われ、心惹かれ、突然アラスカに移住して、写真を取り出した父、星野道夫。

その父と同じ年になり、これから社会に出る翔馬くんが、突然、父親の「生の足跡」を辿る旅に出る。

息子にとって父親は、超えたい存在であり、ライバルでもあり、同時に最も承認されたい人なのであろう。

父親に面影が似ている翔馬くんが、番組の中で、

父がどれほど自分が生まれたことを喜び、かわいがってくれたかを知れたことが嬉しかったと、

はにかみながら語っていたことがとても印象的だった。

 

 

(注)星野道夫さんの写真は、ブログに書く時に使わせてくださいと直子さんにお伝えし許可をいただいています。

 

『私に帰る旅』
(学芸みらい社)


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『約束された道』
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心理カウンセラー、セラピスト、研修講師、作家、東海ホリスティック医学振興会顧問
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