世界は優しいなんて思えなかった、あの頃は

世界は優しいなんて思えなかった、あの頃は


「喪失」と「終焉」は、昔から私が最も怖れてきたものだった。

喪失も、終焉も、死を意味する。

すべてがいつか必ず終わる。

出会ったものは必ずいつか別れの時が来る。

生きて別れるか、死んで別れるかの違いだけ。

永遠に続くものなど何ひとつない。

この世の諸行無常・・・

その世界に生きているということが、子どもの頃から悲しくて悲しくて仕方がなかった。

すべてのものが移り変わり、すべてのものが流れ去り、すべてのものが終わってしまうこの世界。

そんな幻想の世界で、人は喜んだり、はしゃいだり、夢中になったり、愛し合ったり、夢をみたり、成功してご満悦になったり。

でもそんなものは所詮、一時の満足、慰め、気休め、戯れに過ぎないじゃない。

この世なんてすべてが絵空事、ゲーム、幻影なんだもの。

世界は優しいなんて思えなかった

私の心の奥底にずっと潜んでいた巨大な虚無がパックリと口を開けるような出来事を幾度が経験する度に、すべてが虚しく、悲しかった。

心を閉ざして自分を守ることでしかその季節を乗り越えられなかった。

世界は優しいなんてとても思えなかった、あの頃は。

しかし、今思うと、その空虚さと虚無感が、

この世界で人間として生きるとはどういうことなのかという

生への本質的な問いに向かわせてくれたのだ。

外側にあるもので自分の空虚さを満たす生き方から

自分の中心へ、中心へとベクトルの向け方を強制的に変えられていった感じだった。

まるで台風の目のように外側の世界がどんなに暴風雨で荒れ狂っていても、

そこにはただただ静かで穏やかなスペースがあった。

今自分が「どう在る」ことが本当に望んでいることなのか

人生という長い旅路の中でどうしても避けられないのが「愛する人や大切な存在との別れ」だろう。

家族や友人だけではなく、家族同様の存在だったペットの死また同じだ。

無邪気に信じていた

「私たちの未来」

「俺たちの明日」

がある日突然幕を降す。

人間関係だけでなく、仕事や会社だって失うこともあり、離れることもあり、終わることもある。

望む、望まないにかかわわらず。

ある日、仏教用語のある言葉に会った時、ハッとした。

「愛別離苦」(あいべつりく)

「会者定離」(えしゃじょうり)

という言葉だった。

この世には、愛する者といつかは必ず別れる時が来るという苦しみがあるということ。

出会った者同士がいつか必ず離れる時がくるということは、

苦しみもまた永遠ではないということ。

永遠に続くかのように思考が思い込んでいるだけだということ。

喜びのときもまた過ぎ去っていく。

どれほどその感情や状態が至福であったとしても。

この世という現象の世界では、思考も感情も体験も空に浮かぶ雲のように流れていく。

すべてが変わり続けることがこの世の常であること。無常ということ。

だからこそ、今ほんとうに大切にしたいことは何なのか。

今自分が「どう在る」ことを自分の深い部分は望んでいるのか。

今自分ができる最善の選択は何なのか。

今自分が真剣に取り組まなければいけないことは何なのか。

という心の声に誠実に真摯に耳を傾けることができる。

それが、かけがえのない今この時を生きられる自分になっていくということだった。

自分の人生で二度とない今という瞬間、今日という一日をどんな風に過ごすのか、、、

未来に幸せになるのではなく、

今ここにある幸せを感じられる心、

その感性を大切に生きることだった。

 

憎しみは凍りついた愛の感情

喜びを感じるためには、悲しみも感じるという対価がいるということ。

喜びの大きさは、悲しみや苦しみの大きさに比例するということ。

憎しみという感情さえ、愛がなければ生ま れない。

憎しみは、凍りついた愛の感情なのだから、

醜い感情だなんて忌み嫌うことはないのだ。

凍りついたものが溶けて流れていく先は、やはり愛なのだから。

つらいことだけれど、人間に、人生に深さを与えるもの、人を成長させるものは、

自分 が絶対に経験したくないと思っていた後者の方の体験なのだ。

 

人間の最も深い苦悩

失敗や挫折、

喪失や終焉、

傷や痛み、

病気や障害、

老いや貧しさ

崩壊や離別、

敗北や絶望、

孤独や虚無、、、

文字通り人間の最も深い苦悩、

闇夜を歩くような体験の中で、

人は鍛えられ、

育てられていく。

冬の凍えるような寒さの中で、

春や夏に咲く花の種が育っているように。

秋の紅葉さえ、

冬の厳しい寒さを経な かったら、

あの美しい紅葉はないのだ。

 

何も挑戦せず、何も表現せず

真の豊かさや美しさや実りは、

寒さや厳しさの中で育つものなのだという自然の法則。

後者の体験を避けて通ろうとすることも、

ある程度はできるだろう。

でも、失敗したくな い、

いやな思いを味わいたくない、

裏切られたくない、

失いたくない、

もう傷つくのはいやと、

何も挑戦せず、

何も行動せず、

何も表現せず、

誰も愛さない人生なんて、

何の意味 があるだろう。

なんのために生まれたのだろうと思う。

 

無意味な経験なんてない

そういう視点で見てみると、

人生には何一つ無駄なもの、

価値のないもの、

無意味な経験なんてないのだと思う。

この地球という星が学びの学校であると言われるのは、

こうし た二極の世界で成り立っているからなのだろう。

 

実はひとつになっている

私たちが生きているこの地球という星は相対性の世界で、

すべて相反する働きと性質とエネルギーをもつものが、

実は”ひとつ”になっているという事実。

違う働きをする二つ のものが

一生懸命バランスをとりながら

生きようとする姿が存在の力であり、

世界の姿であるということ。

 

「闇の深さ」を知っているあなただからこそ

英語の 「GOOD BYE」の由来は

「God be with you」

「神があなたと共にありますように」

「神さまのご加護がありますように」

だという。

人は 「さよなら」 という喪失の悲しみに打ちのめされ、立ちすくんでいる時に、

「神さま、そばにいて」

と心から願うからだろうか。

あまりの寂しさ、

悲しみに耐え切れなくて。

悲しい時は、涙をこらえないで思いっきり泣けばいい。

その涙がひとつの歌になるまで、

一編の詩、 ひとつの物語になるまで泣き続ければいい。

人は、身が引き裂かれるような別離を体験するたびに優しくなっていく。

人は 「GOOD BYE」

「さよなら」

を重ねる度に大人になっていく。

悲しいさよならの涙を流すごとに、

人はだんだん神さまに近づいていく。

哀しみ

あなたの哀しみの深さが

人の心を癒してゆく

あなたの痛みに満ちた人生が

人の痛みを溶かしてゆく

闇の深さを知っているあなただからこそ

人を闇の中でさえ憩わせてあげられる

癒しは かかわりの中で生まれる

「いのちの喜び=出会いの奇跡」

哀しみの深さが こんなにも深く

大きな人生の喜びを運んでくれるのなら

人生に無駄な月日なんてあるはずもない

あなたの辛かった人生が

人とつながること

生きることの深い喜びを味わうための

「大きな大きないのち」からのプレゼントだったのだと

今自分の人生をイキイキと生き始めたあなたを見て思う

 

 

【岡部明美の朗読YouTube】(4分)の第三回目は

「哀しみ」です。

写真は清水友邦(著書『覚醒の真実』『よみがえる女神』』

音楽は、「コズミック・メディテーション」(Amaria)

ピアノ:cocoon本多裕子

動画制作:坂川彌奈子
サポート:横倉雅

現在YouTube「あけみちゃんねる」は、

朗読YouTubeと毎回ゲストを招いての「ライブトーク」の2本立てです。

第二回目の行徳哲男先生とのライブYouTube版は11月28日配信予定です。

【岡部明美第一回ライブトーク】
ゲスト:長堀優(医師)


個人セッション・ワークショップ・LPL養成講座情報

●岡部明美のワークショップ・LPL養成講座

http://www.okabeakemi.com

 

●岡部明美の個人セッション

2020年11月から再開します。対面のみです。オンラインではやっておりませんので、オンラインでの個人セッションをご希望の方はLPL認定セラピストにご依頼ください。

 

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オンライン個人セッション可能な認定セラピスト紹介ページ

 


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●拙著2冊以上をご希望される方は、定価の2割引き、郵送費当方負担でお送りいたします。

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『私に帰る旅』
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投稿者プロフィール

岡部明美
岡部明美
心理カウンセラー、セラピスト、研修講師、作家、東海ホリスティック医学振興会顧問
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