目次
年始から今日までたっぷり時間があったので好きな本や映画を堪能できた。
ブログにも書いたが、昨年久しぶりに映画館で樹木希林さんの遺作となった、
「日日是好日」を見た。この映画の中に出てきたフェリーニ監督の「道」を見たくなって見てみた。
この映画のトップシーンは、主人公の典子が子どもの頃、家族で見に行った、世界的な名画と言われるフェリーニの映画「道」が、
子どもの典子にはどこかいいのかさっぱりわからなかったという話から始まる。
しかし、【日日是好日】の後半、典子は理解していく。
すぐわからないものは、長い時間をかけて、少しずつ気づいて、わかってくるものなのだということを。
子どもの頃は、まるでわからなかったフェリーニの「道」に、大人になった今の自分がとめどなく涙を流すように。
それが、人が様々な経験を重ねながら年を重ね、成熟していく姿なのだと。
映画を作るために神がこの世に遣わした天才たち
フェリーニは、ゴダール、トリフォー、ヴィスコンティと並ぶ映画界の「ヌーヴェルヴァーグ」の巨匠の一人だ。
「ヌーヴェルヴァーグ」とは、仏語で「新しい波」という意味。
フェリーニの「道」を見て、私はこの切なさは、遠藤周作の「私が・棄てた・女」を読んだ時と同じ感覚、感情だと思った。
「私が・棄てた・女」は、切ない小説だった。吉岡のような身勝手な男はゴマンといるが、
最後の『ぼくらの人生をたった一度でも横切るものは、そこに消すことのできぬ痕跡を残す』という言葉は、「道」のラストシーンに重なった。
「道」の主人公の大道芸人ザンパノは、自分を愛してくれた女ジェルソミーナをまるでモノのように捨てて立ち去った。
数年後、ザンパノは、ジェルソミーナが死んだことを知って、浜辺で悔恨と慟哭の涙を流し続けるのだが「道」のすべてはこのラストシーンに凝縮されている。
その悲しみを、真っ黒い夜の海の、寄せては返す白い波頭で表現する。
フェリーニは、映画を作るために神がこの世に遣わした天才の一人と言われているが、その通りかも知れない。
以前とはもう感じ方が違う
話は戻るが、「私が・棄てた・女」をかつて読んだ後、
立て続けに遠藤周作の最高傑作と言われる「深い河」や「沈黙」も読んだ。20代の始めころだ。
この2冊を40代になって再読してみた。驚いた。あの頃とは全く違う深い感動を覚えたのだ。衝撃すら感じた。
以前に読んでいたにもかかわらず、私は初めてこの作品の魂にじかに触れたと思った。
本も映画も、10年、20年経って再び同じ作品に触れた時に以前とはもう全く違う感じ方や受けとめ方をしている自分に驚くことがある。
あの時代から一体何が進化しているのだろう
フェリーニの「道」を見たら、あの時代の作品が急に見たくなって探しに行った。
選んだのは、昔見て好きだった
ゴダールの「勝手にしやがれ」
ヴィスコンティの「家族の肖像」
トリフォーの「突然炎のごとく」
ストーリーは、ネットで検索すれば出てくるので省きますが、
一番驚いたのは、「道」にしろ、「勝手にしやがれ」にしろ、「突然炎のごとく」にしろ、
とにかく主人公達が蒸気機関車ですか?
というくらいひっきりなしにタバコを吸っていること。
タバコを吸うことがカッコいいと思われていた時代だったわけです。
1960年代、70年代にヒットした映画ですが、時代は変わったなあと隔世の感でした。
でも男と女のメロドラマや家族の悲喜交々は、時代が変わっても、国が違ってもあいも変わらずで、覚醒の感は全然ありませんでした。
当時は、ヌーヴェルヴァーグという映画界に革命を起こした映画制作技術ですが、
最近の映像技術に比べたらそれは雲泥の差です。技術革新は確かに素晴らしく進化している。
テーマも全く新しい世界観を見せている作品も最近は多い。
しかしながら、男と女の関係性や在り方、家族の関係性や在り方、様々な人間関係のコントロールドラマ、
社会全体の権力構造、富の奪い合い、戦争など、あの時代から一体何が進化しているのだろうと思う。
あの頃の若者達に多大なる影響を与えた人達
ヌーヴェルヴァーグの巨匠達が活躍したのは、
1960年代、70年代だ。
この時代は音楽の世界ではビートルズが革命児だったし、
作家の世界では、先日亡くなったが、
「ビー・ヒア ・ナウ」の著者、アメリカの精神的な教師、心理学者、作家のラム・ダスや
「ドンファンの教え」で有名な人類学者であり作家であるカスタ・ネダなどが、
若い世代に多大なる影響力を与えていた。
ラム・ダスやカスタ・ネダの本も再読してみたくなった。
こんなにベリーショートが似合う女性もいない
そのような問題意識も改めて感じるのだが、映画という娯楽作品としてかつて好きだった映画を再び見て感じたこともある。
「勝手にしやがれ」のジーン・セバーグの可愛いらしさ、かっこ良さは今見てもやっぱりいいなあと思う。
こんなにベリーショートが似合う女優もちょっといない。ヘプバーンと並ぶキュートさだ。
フランソワーズ・サガンの「悲しみよ、こんにちは」にも出ていたジーン・セバーグだが、
映画的には、「勝手にしやがれ」でスターダムに乗った女優だ。
ストーリー的には「灰とダイヤモンド」と似ているが、
やはりこの映画は、私的には、ジーン・セバーグの魅力に釘付けになる映画だ。
自分の人生を生きたい
ジャンヌ・モロー主演の「突然炎のごとく」はかなり衝撃的な映画だった、当時は。
ジーン・セバーグもジャンヌ・モローも自由奔放な女性として描かれている。
今の時代でもここまでとんがって生きている女性はそう多くはない。
しかし、とんがって生きたいかどうかは別にしても「自分の人生を生きたい」「自分がほんとうにやりたいことやって生きてたい」
という女性が確実に増えていることはクライアントさんのご相談を日々受けていて思う。
この10年くらいは特にそのようなご相談を受けることが多くなっている。
パートナーシップも家族の形も多様化していく
ジャンヌ・モローは、悪女の代名詞みたいな女優だけれど、すごい存在感だ。
かっこ良さに芯が通っていて逞しい。二人の男がゾッコン夢中になるわけだ。
でもこの映画、今見てみたら、ポリアモリーの先鞭を切った作品だったことがわかる。
私は無理だけど、こういう世界はありだよねって思う。
パートナーシップの形はこれからどんどん多様化していくと思う。
終身雇用制が事実上崩壊しているのと同様に、終身雇用夫婦も鉄壁ではもうなくなっていくだろう。
古色蒼然とした古い意識はますます揺さぶられていく
ヴィスコンティは、「家族の肖像」「ベニスに死す」「山猫」が代表作だ。
ヨーロッパの貴族社会とその人間模様を知りたかったらヴィスコンティだ。
ヴィスコンティの作品はこれからまとめて見る予定。
私は今、ヨーロッパと北欧に新たな関心があるので、今年もまた行く予定。
もちろん日本の縄文文明が日本の精神文化の復活の鍵を握っているのは言うまでもない。
映画制作や映画界の旧システムに新しい波を起こしたかつての若き獅子たち。
令和もまたあらゆる旧社会システムや、古い価値観、これまでの常識、堅い枠組みは見事に壊れていくだろう。
個人の古い意識はますます大きく揺さぶられ、日本の社会全体のヌーヴェルヴァーグが始まる、いやもう始まっている。
新しい波に乗るのか。
新しい波を起こしていくのか。
私は後者でありたい。
そして新しい波を起こしている人たちとつながっていきたい。
フェリーニの「道」を見るきっかけとなった過去ブログ。
YouTube【あけみちゃんねる】は現在、月に1回、“徹子の部屋”風に毎回ゲストを招いての「ライブトーク」(1時間)と
『もどっておいで私の元気!」(善文社)の「朗読YouTube・詩と音楽と映像のシンフォニー』(約4分)の2本立てのチャンネルです。
多くの方にチャンネル登録していただきありがとうございます。
【岡部明美 朗読Vol.03】
タイトル:苦しみ~愛しきものへ
【岡部明美第6回ライブトーク】
ゲスト: 清水友邦さん(イーハトーブ心身統合研究所所長/『覚醒の真実』『よみがえる女神』著者)/ロケ編3猫の事務所
2021年・岡部明美の活動
●5月5日、6日に湯河原「ご縁の杜」でイベントがあります。
音開きの演奏は伊藤マナ&ひろのクリスタルボウル、太鼓はチャッキリ
その後岡部明美と清水友邦さんのリアルライブトーク
その後清水友邦さんの
「呼吸道」があります。
どちらかご都合のいい日程を選べます。
●6月4日(金)〜6日(日)
湯河原「ご縁の杜」で岡部明美とアドラー心理学講師/カリスマ企業研修講師の小倉広さんとのコラボワークショップがあります。
テーマは
「カウンセリング型1on1コミュニケーションを学び、組織の健全度を上げる」
〜組織に心理学の学びを取り入れることで社風が格段によくなる〜
岡部明美《個人セッション・ワークショップ・LPL養成講座情報》
【2021年の予定】
●ワークショップ・LPL養成講座
岡部明美LP L養成講座の認定セラピストがオンラインで個人セッションをしています。
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●お申込み(お名前・ご住所・電話・メルアド・本のタイトル・冊数を書いて下記にお送りください)
『私に帰る旅』
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角川学芸出版から刊行された本書が、
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『約束された道』
(学芸みらい社)
2017年6月刊行と同時に増刷。
2018年4月第3刷決定。
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『もどっておいで私の元気!』
( 善文社)
1996年5月刊行から24年間のロングセラー。第12刷。
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CDは講演会、ワークショップ等で販売しています。必要な方は、Facebookのメッセンジャーにご連絡下さい。
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心理カウンセラー、セラピスト、研修講師、作家、東海ホリスティック医学振興会顧問
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