心が疲れてしまった時

心が疲れてしまった時


今年はコロナによって例年やっていた仕事のほとんどが中止になりました。

オンラインでやることも考えたのですが、

どうにも気持ちが動きません。

気持ちが乗らないことをやることができないからだになってしまったので、

はてどうしたものかと考えあぐねていました。

でもよく観てみると、今までやってきたことをオンラインでやるということには気持ちは乗らないけれど、

オンラインそのものには何か未知なる可能性がありそうだと感じている自分がいました。

じゃあ、オンラインを使ってやるどんなことだったら、

私はワクワクするのだろう?

「楽しい」って思いながらできるだろう?

としばらく模索していました。

そうだ、せっかく時間がたっぷりできたのだから、

忙しかった時にはできなかったことをやってみよう!

まずはZOOMを使ったライブトークを

月に一度ゲストを招いてやってみようと思いました。

対談したい人の顔が15名ほどすぐに浮かびました。

その方々にメールで打診してみたところ、全員にご快諾いただきました。

もう一つは、3冊ある私の本の朗読YouTub動画を作ろう!

と突然閃きました。

本は読むものだけれど、

「聴く本」

「見る本」

「動く本」

があっても面白いなと思ったのです。

 

ほっと心が安らげるもの

読書が苦手な人、活字嫌いの人もいるし、

本は好きだけれど最近はめっきり老眼が進み、

本を読むのがつらくなってきたという人も多いでしょうから。

3冊ある本の最初の本『もどっておいで私の元気!』(善文社)は、おかげさまで24年間のロングセラーになっています。

まずは最初に出版したこの本から動画を作ることにしました。

特に今年はコロナによって社会全体が不安と緊張感と猜疑心で

ピリピリ、トゲトゲした重たい空気感になっています。

そんなストレスの多い社会の中で少しでも心がほっと安らげるようなものを創っていきたいと思ったのです。

 

いのちの花

朗読は私です。

音楽はコクーン=cocoon
(ヴォーカル・水月悠里香/ピアノ・本多裕子)

ボーカルのゆりちゃんこと水月悠里香は、女子校時代からの親友です。裕子ちゃんは某有名バンドでキーボードを弾いていました。元々はジャズピアニストです。

コクーンは、40代になってから結成された主婦ユニットです。二人の作る楽曲が評判を呼び、雑誌やテレビで次々に紹介され、4大新聞全てに記事が掲載されました。

コクーンとのコラボですでに10年前にCD「いのちの花」(岡部明美朗読/音楽cocoon)で出ていますが、

まず最初の3本のYouTubeは、このCDを動画にしてみました。

これから新たに朗読するものもありますし、

新たな音楽も入れて動画を作ってゆく予定です。

動画制作をしてくれたのは、私のワークショップに何回か参加してくれた

坂川彌奈子さん(みなちゃん)です。サポートは横倉雅ちゃん。

みなちゃんは、動画など作ったことがないのに今回

「やってみたいです!」

と手を挙げてくれて作ってくれたのですが、

「これが本当に動画制作初心者の作品なの?!」

と思えるほどクオリティが高いものができたと思います。

《存在》岡部明美朗読
Vol ・1 『もどっておいで私の元気!』より
音楽cocoon

詩を書くことが昔から好きだったの?

最初の本、「もどっておいで私の元気!」(善文社)を出版した時、

「昔から詩を書いていたの?」

「詩を書くのが昔から好きだったの?」

といろんな人から聞かれました。

いえ実は、詩を書いたことなど一度もありませんでした。

詩を書くことはしたことがありませんが

詩集を読むのことは昔から好きでした。

大好きな詩人は何人もいます。

私の本棚の一画は詩集で占められています。

このブログでも何人かご紹介しています。

参考ブログ:「私を束ねないで」

参考ブログ:「神は強情に不在し続け、私は強情に愛し続けた」

 

心が疲れてしまった時

そんな私が詩を書くようになったのは、死に直面するような病気になった時からでした。

死が、詩という「言の葉」のつむぎ方を自然に教えてくれたように思います。

脳の開頭外科手術の後遺症で右手が痺れていたため、

包丁を持つことも文章を書くことも最低限しかできなかったということも背景にあります。

本を読むことが大好きな私が、術後は体力が極端に落ちて、

たくさんの文字が書いてある本が全く読めませんでした。

ですから、この本が出版されることが決まった時は、

迷わず、文章量の少ない詩やエッセイの形にしようと思いました。

なぜなら人は、本当に人生に絶望した時や

心も体も疲れ切ってしまった時

涙が枯れるほど泣いて暮らすしかない時は

たくさんの文字のある文章を読むのはしんどいことは

自分が一番わかっているからです。

そんな苦しい今を生きている人が

心がほっと安らぎ、癒され、

人生に希望が持てるような本にしたかったのです。

 

もう無理、もう限界、、、

『もどっておいで私の元気!』も、

今回初めて作ったYouTube動画も

最初の詩は「存在」です。

この詩は、私の「生き直し人生」の始発駅だからです。

誰の人生にも「もう無理」「もう限界」「もうこれ以上は一歩も前に進めない」

と人生に絶望するときが大なり小なり起きてくるのではないでしょうか。

私はそんな精神の荒野を歩いている人が、

それでも人生を諦めたくない、

本当の自分を取り戻したい、

新しい人生の扉を開いて前に進みたい

そんな想いを抱きながら今を懸命に生きている人のためのメッセージを伝え続けていきたいのです。

この「存在」の詩が生まれたエピソードがあります。

生死を彷徨う日々を病院のベッドの上で過ごしていたある日のことでした。

2冊目の本『私に帰る旅』(学芸みらい社)から抜粋します。

 

これ以上どうがんばればいいの

最初は頭にネットをかぶっていた。

駅で売っているネットをかぶったミカンの姿だ。

ネットの色は白だったけれど。

本当にあれをかぶって、チュープだらけのからだで寝たきりになっていると、どこから見ても悲惨な病人だった。

私は、家族以外は誰とも会いたくなかった。

面会謝絶でよかった。

こんな姿は誰にも見られたくない。

面会謝絶でなくても、たぶん私は、友人たちの見舞いを望まなかったと思う。

元気丸出しだった私のこんな変わり果てた姿を見たら、

なんと声をかけていいのかわからず友人たちは困ってしまっただろう。

言葉のかけようがなくて、「がんばってね」としか言えないかもしれない。

でも、これ以上私は、どうがんばりようかあるというのだろう。

もう私はがんばりたくなかった。

がんばるのは、もうたくさんだった。

 

私は生きているだけでいいの?

ネットがはずされる日がきた。

管が左右に二本挿されたままの丸坊主の頭が剥き出しになった。

朝手鏡で初めて自分の管付きの生の坊主頭を見た。

すごくショックだった。

もう見たくないと思い手鏡をすぐべッドサイドのテープルに置いた。

朝食後、夫が病室に入って来た。

夫は私の頭を見て顔色ひとっ変えずにこう言った。

「明美は、けっこういい頭の形してたんだ。これだったら尼さんになってもいけるかもな」

そして、静かな目で私を見つめながら・・・

「明美、死ぬなよ。あの子がお前の忘れ形見になるのはいやだからな。

生きているだけでいいから、そばにいるだけでいいから」

「・・・」

私はこの瞬間、術後初めて、私のからだから、

いのちの泉がこんこんとあふれはじめたのを感じた。

「私は生きているだけでいいの?」

「いるだけでいいの?」

 

かけがえのない存在になりたかった

私は今まで、自分がいるだけでいい、生きているだけでいいなんて思ったことなどあっただろうか。

私の心の中で何かが大きくひっくり返った気がした。

私は心のどこかでずっと自分を、欠点が多く、頭も悪く、我も強く、

ダメなところがいっぱいある人間だと思ってきた。

だから、ひとつでも欠点を減らそう、価値のある人間になろう、

自分を磨いて人から必要とされる人間、愛される人間になろうと思ってがんばってきたのだ。

「君の替えなんかいくらでもいるよ」

「別に、君でなければならない理由なんか何もないんだから」

こんなふうに人から思われることは、私には耐えがたいことだった。

自分が交換可能な存在であるということはすごく悲しい。

私は、特別な自分になり、君の替えなどいないと思われるような存在になりたい、

そのための努力ならいくらでもすると思って今まで生きてきたのだ。

私はただ誰かにとっての”かけがえのない存在”になりたかった。

それなのに、人の役に立つどころか、こんな自分・・・。

人に迷惑ばかりかけ、何から何まで世話してもらわなければ生きていけない私なのに、

それでも私は生きていていいの?

いるだけでいいの?

世界がひっくり返った気がした。

夫は、手術前に医師から、「仮にいのちが助かったとしても、どんな後遺症が残るかもわかりません」

と言われた瞬間、たとえ私が植物状態になったとしても、

自分が一生面倒を見ると心の中で決めていたと後で聞かされた。

私には、あれもない、これも足りないと思って生きてきたのに、

なんということだろう。

こんなにやさしい家族や、大好きな友だちがいつばいいた。

私を生かしてくれている、こんなにかけかえのない”いのち”があった。

 

存在の力

夫の「いるだけでいい」という言葉は、私に、とても大切なものを思い出させてくれた。

そして今、存在の力を私にくれている最たる者が私の赤ちゃんだ。

しかし、あの子は今、自分が母親の生きようとする最大の目標、

エネルギー源になっていることも知らずに保育器の中でただ無心にミルクを飲んでいるのだ。

もしかしたら人はみな、自分の存在が誰かの生きる支えや希望になっていることに気づきもせずに、

自分にないもの、手に入らないもの、満たされていないものばかりを数えながら、

日々を生きているのかもしれない。

 

YouTube
《存在》岡部明美朗読
Vol ・1 『もどっておいで私の元気!』より
音楽cocoon

 

写真:清水友邦

 

 


 

【岡部明美ライブトークシリーズ】

Zoomでゲストと対談したものは後日YouTubeにアップする予定です。

当日のzoomの入り方は対談日の数日前にFacebookのタイムラインでお知らせします。

●第二回以降のライブトークの日程とゲスト

第2回目: 9月29日(火)14時30分開始

●行徳哲男先生(日本BE研究所所長/著書『感奮語録』『いまこそ感性は力』(芳村思風共著)

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第3回目:10月20日( 火)

●船越康弘先生(自然食料理人・百姓屋敷わら経営/著書『わらのごはん』『野菜たっぷり重ね煮レシピ』

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第4回目:11月22日(日)
14時30分開始

●神渡良平先生(作家/著書『中村天風の言葉』『宇宙の響き』『安岡正篤人間学』『苦しみとの向き合い方』

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第5回目 12月25日(金)
14時30分開始

●湯ノ口弘ニ先生(コミュニケーションエナジー代表/著書『コミュニケーションが人を変える、成長を促す、組織を変える』

 


 

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個人セッション・ワークショップ・LPL養成講座情報

●岡部明美のワークショップ・LPL養成講座

http://www.okabeakemi.com

 

●岡部明美の個人セッション

2020年11月から再開します。対面のみです。オンラインではやっておりませんので、オンラインでの個人セッションをご希望の方はLPL認定セラピストにご依頼ください。

 

●LPL養成講座の認定カウンセラー・セラピストがオンライン個人セッションをしています。お勧めです。

オンライン個人セッション可能な認定セラピスト紹介ページ

 


書籍&CDのお知らせ

 

●拙著2冊以上をご希望される方は、定価の2割引き、郵送費当方負担でお送りいたします。

●お申込み(お名前・ご住所・電話・メルアド・本のタイトル・冊数を書いて下記にお送りください)

3daysbook@okabeakemi.com

 

『私に帰る旅』
(学芸みらい社)


角川学芸出版から刊行された本書が、
装幀も新たに学芸みらい社から刊行されました。
Amazonで購入できます
全国の書店でもご注文できます

『約束された道』
(学芸みらい社)


2017年6月刊行と同時に増刷。
2018年4月第3刷決定。
Amazonで購入できます
全国の書店でもご注文できます

 

『もどっておいで私の元気!』
( 善文社)


1996年5月刊行から24年間のロングセラー。第12刷。
Amazonで購入できます
全国の書店でもご注文できます

 

『いのちの花』
(CD)


¥2,000
CDは講演会、ワークショップ等で販売しています。必要な方は、Facebookのメッセンジャーにご連絡下さい。

 

投稿者プロフィール

岡部明美
岡部明美
心理カウンセラー、セラピスト、研修講師、作家、東海ホリスティック医学振興会顧問
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