現実世界の資格、心の世界の認定や資格
父は家が貧しかったために大学に行けなかった。
鉄は国家なりの時代の新日鉄で、それこそ馬車馬のようによく働いていた。
自分よりうんと若い後輩達ー国立大学、一流の私大を出た部下がどんどん自分を追い越して出世していく。
高卒であることで悔しかったことがいっぱいあったのだろう。お酒を浴びるように飲んでは荒れ狂っていたから。
お酒を飲んでいない時は明け方まで勉強していた父の背中を思い出す。
大企業で高卒の人間が出世するためには、国家試験に受かって国家資格をいくつ持っているかが勝負だったみたいだ。
父は死に物狂いで勉強して17個の国家資格をとった。
危険物取扱なんとか、溶接技術なんとか、など色々。
私にはちんぷんかんぷんなものばかりだった。
これらの資格を持っていることは確実にある水準以上の仕事ができることを保証している。
しかし、心の世界の認定や資格に関してはどうなのだろう。
人間は粗雑にはできていない
対人援助職の仕事をしてもう22年になる。
おそらく高級車1台買えるくらいの学びという自己投資はしてきた。
心の世界も身体の世界も、これでもう全部わかったなどと言える境地はありえない。
それは、宇宙の仕組みが全部わかったということと同じだからだ。
学べば学ぶほどいかに自分は何も知らなかったのかということに愕然としたり、
人間の心の宇宙の神秘に感動したり、人間の素晴らしさに心が打ち震えることも多い。
ひとつ言えることは、どれほど優れた理論、メソッドであっても、
それ1つで多様なクライアントさんの多様な問題を全部解決できるものなどないということだ。
人間は、そんなに粗雑にはできていない。
カウンセリング、セラピー、ヒーリング、ボデイワーク、コーチング、コンサルティング
など対人援助の手法は、今世界中で約450種類もあるという。
しかし、アメリカの臨床心理学会の発表では、誰に対しても効果が高かった理論、メソッドなどなく、
そのメソッドを
「どのような人」が、
「どのように使った」
かが、セッションの成否に大きく影響していることがわかった。
まさにこのブログのタイトルである「Power of Being」である。
援助の仕事をする上で最も大事なこと
その人の「在り方」「生き方」「価値観」「雰囲気」「メッセージの出し方」というのは、
クライアントさんに対して想像以上に大きな影響力を持つのだ。
ゆえに援助者自身が、自分の心の傷をどれだけ癒してきたか。
心の傷が作り出した自我の防衛パターンやコントロールドラマの問題をどこまで観てきたか。
投影の取り戻しをすぐできるようになっているか。
自分の中にある光も闇も両方愛せるようになったか。
被害者意識や犠牲者意識は手放せたか。
あるがままの自分と他者にOKが出せているか。
自分の感情的な自動反応のパターンを俯瞰できるようになったか。
自分のネガティブな感情や人生に起こる辛い出来事を相手のせい、誰かのせい、人のせいにしていないか。
これは決して援助者が聖人君子のような素晴らしい人格者になるべきだということではなく、
一人の人間としてどこまで自分に向き合ってきたか、ということが援助の仕事をする上で最も大事だと思うからだ。
そう思うようになったのは、心の世界の資格ビジネスに大いに疑問があったからだ。
「このメソッドを身につければ、あなたも2週間でヒーラーへの道が開かれます」
「わずか3ケ月学ぶだけであなたもカウンセラー、セラピストとして開業できます」
短期間の学びと課題を出しただけで、試験もなく、認定や資格が簡単にもらえるから人も飛びつきやすい。
資格を出す方もたくさんの人に出した方が儲かるからバンバン資格、認定を出す。
私は人の意識の変容、在り方ーBeingが本当に変わっていくのには最低でも3年はかかると思っている。
好きなこと、ワクワクすることで稼ごう!みたいな風潮が最近多いが、
こと心の世界に限って言えば私は一抹の危惧を覚えている。
時に人の人生を変えてしまうほどの影響力を持つ仕事だからだ。
ハウツー、スキルを超えて
対人援助職(心理カウンセラー・セラピスト・ヒーラーなど)を生業(なりわい)とする人は、
心の構造を学び、自分の心の傷を癒し、自我の防衛パターンに気づき、
これまで自分がやってきた不健全なコミュニケーション、仕事の仕方、在り方、生き方を手放し、
自分の中の真実を生きる勇気に踏み出していることが大切だ。
人を援助するためのハウツー、スキルをあれこれ学んでも、どれほどたくさんの認定や資格を持っていても
一人の人間としての自分の不完全性を自覚していることは何より大事だ。
下記のパターンがいまなおある人が援助の仕事をすることは危険なのだ。
人生に起きてくる問題を人のせい、誰かのせいにする人。
人を非難しがちな人、自分を責めがち、自分へのダメ出しが多い人は、
同じように人を責めがちだし、人へのダメ出しをするものだからだ。
他者をどこまで受容できるかは、自分をどこまで受容できているかに比例する。
他者の内なる声をどこまで聴けるかは、自分の内なる声をどこまで聴けているかに比例する。
他者をどこまで愛せるかは、自分をどこまで愛しているかに比例する。
他者をどこまで癒せるかは、自分をどこまで癒してきたかに比例する。
他者をどこまで活かせるかは、自分をどこまで活かしているかに比例する。
自分との関係が人との関係に投影されるのだ。
自分を癒し、自分を許し、自分の今までのがんばりをねぎらい、自分の本当の気持ちにつながり、自分の人生のマスターとして生き始めると人生が大きく変わり始める。
健全な自己観、人間観、世界観、仕事観が生まれると自ずと人は輝きはじめる。
それは自然に、いつの間にか、、、
そういう在り方、生き方になっていった時に学んで身につけた知識や理論やスキルが本当の人のお役立ちになっていくのだ。
在り方、生き方が本質の自己と繋がり始めると、直感、インスピレーションが働き出す。
そして一人で頑張らなくても、人が力を貸してくれたり、助けてくれたり、応援してくれるようになっていく。
援助の仕事をしていく上で、視野を大きく広げ、視座を高くしてくれ言霊に触れることも大いに役に立つ。
私が共感したメッセージには共通した考えがあった。
それは、人間の本質とは何かというスピリチュリテイの眼差しがあったこと。
人間をボディ・マインド・スピリットが有機的につながりあった存在として見ていること。
東洋と西洋の知恵を融合、統合していること。
問題を悪と捉えていないこと、
むしろ、スピリット、大いなる存在からのメッセージで、
問題や試練を「人生の新しい扉を開く鍵」であるという考え方をしていること。
問題は、その人の「自己成長」や「覚醒」の大いなる機会であると捉えているところことでした。
例えば、私が好きなメッセージにこんなのがありました。
愛による癒しとは、その人が、その人自身の道に戻る手助けをすることだ。
我々は誰しも「青写真」を持って生まれてくるが、
その青写真には、体型や体質の設定だけでなく、
心理的、知的、霊的な成長の設定も描かれている。
内なる青写真からそれてしまうと
「おい、おい、君らしくないぜ。自分の道に戻りなよ」
というように、精神的、肉体的な病気をもたらして本来の状態に戻そうとするのだ。
決定的に重要なのは、治療家が自己の痛みを見つめ、
それに対処するのを忘れてはならないということだ。
患者にとってそれがどんなに難しいことかも知らずに、
自分が体験も実行もしていないような忠告を与えているだけではだめなのだ。
治療家自身の生きた体験から生まれた治療、セラピー、ヒーリングの愛は本物になる。
そして、本物の愛でなければ説得力を持たない。
治療家が自分をさらけだすことによって、
治療は患者と治療家が互いに痛みを癒しあうプロセスになる。
(バーニー・S・シーゲル博士)
現在起きている問題は、過去の痛みが変装したものである。
私たちは常に癒しと成長に必要なレッスンを学ぶのにピッタリの場所にいる。
問題の下には必ずギフトがある。
問題には高次の目的がある。
どんな問題も贈り物を隠し持っている。
問題の大きさに関わらず、それを変容させる最も簡単な方法の1つは、
問題が隠している贈り物に気づくことです。
贈り物の一つひとつを受け取り、分かち合うことで、
エゴが小さくなり、恩恵(天の恵み、宇宙からの無償の愛)への扉が開かれます。
(ビジョン心理学創始者 チャック・スペザーノ博士)
慢性の身体症状や、人間関係のもつれや別離、
さまざまな嗜癖、さらには、人種間の葛藤や戦争といった、
一般的には否定的にしか捉えられない出来事、人生の闇の部分とじっくり瞑想的につきあうなら、
そこから私たちにとって決定的に重要な意味を持つ、何らかのメッセージを獲得できる。
病気はあなたの身体がビッグ・ドリーム、
すなわち大きな意味を秘めた「夢」を抱いているということであり、
沈黙の力から重要なメッセージを受け取ることができる絶好のチャンスとも言える
(プロセス指向心理学創始者 ア-ノルド・ミンデル)
私たちは、タオについて知れば、知るほど、
セラピーを可能にする基本的な逆説に目覚めていきます。
一方で私たちは、何かが変わらなければ、何かを変えなければと思っています。
しかし、生命の本質は変化そのものです。
私たちはただ、その変化に気づき、
それと共に自由に動いていくだけでいいのです
(ハコミセラピー創始者・ロン・クルツ)
あなたは空を求めていて、大地を完全に忘れている。
それもよい。空にも到達できるだろう。
だが、それができるのは、深く大地に根を降ろした者だけだ。
もしも木が、空高く飛び、雲と語らい、風と戯れ、星々と交わることを望むなら、
それは大地に深く、より深く、根を降ろしていなければならない。
それからのことはひとりでに起こる。
根が深くなるほど、木はより高く伸びる
禅が唯一知っていることは、一切の矛盾を深い調和の内に包含する広大な生だけだ。
夜は昼と調和し、生は死と調和し、大地は空と調和し、存在は不在と調和する。
この途方もない調和、この和合こそが禅の本質だ。
これこそが、何も否定せず、
何も非難せず、ただ愛し、尊ぶ唯一の生き方だ。
(OSHO)
最高の善は、水のようだ。
水は、地球上のすべてのものに生命を与え、争ったり、闘ったりしない。
水は、人がいやがるような、どんな低いところにも流れていく。
水はタオに似ている。
(老子)
岡部明美公式サイト
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投稿者プロフィール
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心理カウンセラー、セラピスト、研修講師、作家、東海ホリスティック医学振興会顧問
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