目次
〜努力していたわけではない〜
高校の頃、英語のリーダーは好きで得意だったけれど、グラマーは苦手で、嫌いで、できなかった。
世界史は好きだったけれど、日本史は不得意だった。
現代国語は好きだったけど、漢文・古典は苦手だった。
同じ、英語だし、国語だし、歴史なのに、なんでこうも成績に差があったかというと、単純に、成績のいい方は、先生が好きだったから。
だから、よく勉強した。結果、成績がよくなるから、ますますその勉強が楽しくなっていった。
英語のリーダーの先生は、いつも授業のはじめに、ビートルズやボブ・ディランやサイモント&ガーファンクルの曲をかけて、
「英語は耳から覚えろ、それも楽しく覚えろ」
という人だったから授業が本当に楽しかったのだ。
私は、「好き」「楽しい」「面白い」って思うと、すごく勉強する。
いや実は、自分では勉強しているとも、努力しているとも、頑張っているとも思っていない。
ただ、その先生が好きで、その先生の授業が面白かったから、学ぶことが楽しかったのだ。
この傾向は、社会に出てからの学びでも同じで、
誰から学びたいと思うのかという自分の感性の実感は信じられるものだった。
その人の在り方、生き方、世界観、人生観、人間観 、仕事への姿勢に魅力を感じないと、その人から学びたいとは思えなかった。
なので私は、資格や認定を取るためだけとか、ハウツーやメソッドを手に入れるためだけの理由で何かを学び続けるということはなかった。
私は、社会に出てからの方が、勉強好きになった。
自分が興味と関心があることだけを自由に学べる楽しさがあったからだ。
私は、学ぶということは本来楽しいものだと思っている。
あとは、今までさほど興味も関心もなかったことなのに、
その人の魅力によって、いつの間にか心惹かれるようになり、
これをもっと知りたい、深めたい、できるようになりたいと興味、関心を持たせてくれるような人との出会いも大きいと思う。
〜スットコドッコイ子育て日記〜
私は、息子が小学校を卒業する頃まで、まめに子育て日記を書いていた。
子育て若葉マークの私は、立派な子育てなんか全然できなくて、
「あーまたやっちゃった」
というようなことばかりで、育児日誌というより、スットコドッコイ子育て日記だ。
それでも子どもの生きる力というのは素晴らしくて、
どんなドジ親であっても、そこから学んで勝手に育ってくれるのだった。
〜俺、勉強なんか嫌いだな〜
息子が小学校の高学年になった頃のある日。
息子が言う。
「お母さんていつも勉強してるね。いつも本読んでるし、なんか書いてるし」
私は答える。
「いや、これは勉強じゃないの。お母さんの趣味、遊び、レジャーなの」と。
そしたら息子は、
「ふーん。俺、勉強なんか嫌いだな」
とちょっと口を尖らせながら言った。
〜息子が俄然やる気になった〜
勉強もスポーツも特別秀でたものがなかった息子が、一人の監督との出会いで変わり始めた。
息子が小学3年生の終わり頃のある日のこと。
それまでサッカーチームにいた息子が、野球部の監督から声をかけられた。
「岡部、お前、顔がイチローに似ているし、足もすごく速いから野球部に入れ」と。
息子は、小学校の時は確かにイチローに似ていた。今は全然似ていないが。
保育園時代に通っていたスイミングスクールでも、いまいち水泳は好きになれず、
3年生まで入っていたサッカー倶楽部でもあまり楽しそうにはやっていなかった。
「ぼくは、サッカーの才能はないみたい。みんな上手なのに、ぼくだけヘタだ」
と自信を失くしていた。
それでも両親とも陸上部で足が速かったのは遺伝したみたいで、確かに走るのはすごく速かった。
息子は、野球部の監督に声をかけてもらったことがすごくうれしかったらしく、
突然、サッカー倶楽部はやめて、野球部に入ると言いだした。
入ってみると水泳やサッカーの時とは打って変わって、
自分から進んで一生懸命練習するのには驚いた。
暗くなるまでマンションの駐車場で一人で素振りの練習をしている。
手首にイチローの背番号「51」のバンドを巻いて。
父親は、背番号「3」の人を野球の神さまのように思っているが、
息子は、「51」の人が神さまらしい。
夫で慣れてはいたけれど、息子までがプロ野球中継を見ている時は話しかけても返事もしなくなった。
つい1年前では、父親がプロ野球を見ていても見向きもしなかったのに。
変われば変わるものである。
自分の好きなものに出会うと、人は本当に変わる。
野球部の監督はものすごく厳しいが、ほめるのも半端じゃなくうまい。
息子は毎日、練習から帰ってくると、
「お母さん、今日、監督からここは怒られたけど、ここはすごく褒められたよ」
と台所仕事をしている私に話をする。サッカー倶楽部の時にはなかったことだった。
人の能力を引き出すことがうまいリーダーに出会うと人はどんどん成長していくし、輝いていく。
息子はほめられるとすごくやる気になるタイプのようだ。
〜愛の千本ノック〜
息子は、毎週末、父親とバッティングセンターに通いだした。
野球をやっている時は本当にイキイキしている。
この変化は、私にとってもとてもうれしかった。
今まで息子を見ていて、もうひとつ自分に自信がもてない様子が、親として気がかりではあったのだ。
よし、私も彼を応援しようと思い立ち、突然、
「お母さん、明日から、放課後に、“愛の千本ノック”をしてあげる」
と言った。
「えっ、お母さん、ノックなんかできるの?」
私のことを、ものすごくどんくさいと思っている息子は、目を丸くして聞いた。
「みてらっしゃい。びっくりするよ。お母さんはノックの女王だったんだ、昔」
と多少の誇張を混ぜて言った。
しかし、本当に昔からノックだけは得意だったのだ。
愛の千本ノックというのはもちろんウソで、本当は百本ノックが限界。
でも、千本ノックの方が語呂がいいから、それで通すことにした。
小学校の校庭で、放課後、息子相手に「愛の千本ノック」をしていると、
同じ野球部の子が「僕も混じっていいですか」と言ってきて、多い時は6人くらいの子を相手にやっていた。
「岡んちのお母さんかっこいい」
なんて言われると、私もすごく気分がよくて、ますます調子に乗り、張切ってノックするのだった。
〜人生って魂の修行をするところなんだってさ〜
息子は最近ボキャブラリーも豊富になってきて、言うこともすごく面白くなってきた。
私が落ち込んでいると、「お母さん、瞑想すると経験値が500ポイント上がるんだよ。瞑想すると心が落ち着くらしいよ」とか、
「お母さん、どうしようもない時は、祈るしかないんだよ。祈っていると神のご加護が受けられるよ」とか、
「人生楽ありゃ苦もあるさ。お母さん、人生って、魂の修行するとこなんだってさ」などと、びっくりするような言葉を使うのだ。
それも、絶妙のタイミングで。
息子は、私が考え過ぎて固まっている時や、落ち込んでいる時、元気がない時は、瞬時にわかるみたいだ。
私はいつも通り、音楽を聴いていたり、本を読んだりしているつもりなのに必ず見破られてしまう。
「お母さんは、わかりやすいんだよ。単純だから」なんて生意気なことを言う。
それにしても、瞑想だの、神のご加護だの、魂の修行なんていう言葉をどこで覚えたのだろうと思ったら、どうやらファミコンで覚えたらしい。(ファミコンってもう死語かしらん?)
ドラゴンクエストとかいうやつにはまっているから、きっとそういうので覚えたのだろう。
それ以来、気をつけて見ていると、確かに、ああいうゲームソフトって、会話がものすごくスピリチュアルなのでびっくりした。
チャクラなんて言葉がフツーに出て来るのだ!
〜お母さんには、頭脳プレーは無理だね〜
一度、私もやってみようと思って、彼にやり方を教わった。
しかし、痛恨の一撃。
「あ、ダメだこりゃ。お母さんには全く才能ないや。敵をボカスカやっつけることしか能がないんだもん」
「ロールプレイなんだから物語を読めなきゃだめなんだよ。予測がつかなきゃ。展開をよまなきゃ」
「お母さんには、頭脳プレーはムリだね。チーン」
とか言われ、いきなり“退場”させられてしまった。
どうも、私は、ゲームには全然関心が向かないのだった。一度もやったことがない。
しかし、彼の幼顔に似合わない精神世界用語を突然使ったり、生意気なことを言うかと思えば、
とんでもなく勘違いしている日本語を時々使うので笑える。
ある時、野球の試合がある祝日だったのに、私がそれを忘れて、朝、彼を起こさなかったことがある。
彼は自分で起きてきて、
「なんで起こしてくれなかったんだよ! 弁当はどうすんだよ!」
と怒っている。
私がうっかり忘れてしまったことを言うと、
「お母さんは、うっかりばっかじゃないか! パパがいつもあきれてるよ」
「あんまり僕とパパに迷惑かけないでよ!」
と言いながら、時間がないため、何も食べず、あわてて野球道具をもって玄関に向かった。
「ごめん、ごめん。試合がんばってネ! お母さん、後でお弁当作ってもって行くから」
と言ったら、ドアを閉める時に、彼はプンプン顔でこう言った。
「ったくなあ、やってらんないよ。お母さんの親ばか!!」
PS:この日以来、彼は目覚し時計を自分でセットして、自分で起きるようになったのだ。以降、私は朝彼を起こす役目がなくなった。スットコドッコイは、けっこう子どもの自立には役に立つかも💦
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心理カウンセラー、セラピスト、研修講師、作家、東海ホリスティック医学振興会顧問
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