目次
心理学の三大巨頭
アルフレッド・アドラーは、フロイトやユングと並ぶ「心理学の三大巨頭」だ。
しかし、数年前までは、よほど心理学を学んできた人以外は、日本ではほとんど知られていなかったのではないだろうか。
それが一躍、日本でも知られるようになったのは、『嫌われる勇気』( 岸見一郎著)と
『アルフレッド・アドラー、 人生に革命が起きる100の言葉』(小倉宏著)が大ベストセラーとなってからだろう。
アドラーは、「組織の問題は、100%人間関係の問題」であり、
人が他者と結びつきながら、自分の能力や自分らしさを発揮できるためには“共同体感覚”が最も大切なことであると言っている。
対人関係のストレス
昨年の12期LPL養成講座をアドラー心理学の著者であり講師のお二人が受講してくれた。
そのお一人が、前述したベストトセラー『アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉』の著者の小倉宏さん(愛称ひろさん)
そして、もう一人は、ひろさんの友人であり、医師であり、心理カウンセラーであり、作家でもある上谷ミレイさん(愛称ミレイちゃん)だ。
『ミレイ先生のアドラー流“勇気づけ”保健指導“』の著作の後にこの3月に刊行された
を先日読ませていただいたのだけれど、この本は、医療関係者だけではなく、人財育成に取り組んでいる組織のリーダーや、
対人関係のストレスを抱えている組織で働く人たちにもぜひ読んでほしい本だと思った。
イラストが多用され、具体的な事例がわかりやすく、実践的なアドバイスがたくさんある。
自分には居場所がある。自分はここにいていい。
何より前提としてあるアドラーの「勇気づけ」「共同体感覚」いう考え方は、
私がLPLで伝えている「インターディペンデント」ー相互信頼で自分も相手も共に幸せを感じられるコミュニケーション、自分を活かすとともに相手も活かす互恵・互敬の世界とも相通づるものだった。
アドラーが言う勇気づけとは、そこで働く人が、
「自分には居場所がある」
「周りの人は仲間だ」
「自分は必要とされている」
「自分は役に立っている」
と相手が感じられるようにかかわるコミュニケーションの「スキル」と「在り方」のことだ。
勇気づけになる「正の注目10ケ条」と、
勇気がくじかれる「負の注目」10ケ条というのがあるのだが、
上司が「負の注目10ケ条」にほんんど当てはまる人だったら、部下はいつも緊張し、萎縮し、上司の顔色を伺い、怒られるのが怖くてクレームを隠してしまうこともあるだろう。
この人について行きたいとも思えず、辞めていく可能性も高い。社風も決してよくないだろうなと思う。
働く人たちの心理的安全性
上司が「正の注目」10カ条を自然な在り方、生き方、働き方として体現している人であれば、
働く人達の“心理的安全性”は確保され、共に働く人たちは仲間となり、良いチームができ、人は仕事を通して自己成長していくだろう。
リーダーも人から慕われ、協力してもらえ、職場、会社の雰囲気も明るく、暖かいものであろう。
この本の中には「課題の分離」のことや、より良いコミュニケーションに欠かせない「サンドイッチ・ストローク」や「Iメッセージ」の伝え方なども具体的に書いてあってわかりやすい。
子供の頃からずっと生きづらかった
3月9日は、そのミレイちゃんとのコラボトークとオープンカウンセリングの1日だった。
テーマは、日頃、産業医として企業で働く人たちの心身の健康のサポートとコミュニケーションについての学びを提供しているミレイちゃんから、
「働く人たちに心の学びを」というテーマでやりましょうと提案があり、それにした。
「これ以上この上司の下で働くのは限界だ」
「こんな同僚とこれ以上一緒に仕事はしたくない」
「もうこの社長にはついて行けない」
「仕事が全然面白くない」
と会社を辞め、転職する人、独立起業する人は最近とみに増えているが、
働く人もまた心の学びをせず、働く場だけ変えたり、自由にマイペースで働けるフリーランスに憧れて会社を辞めたとしても、仕事は自分一人だけではできない。
必ず人と関わらなければならないからだ。
新しい会社に移ったところで、フリーになったところで、どこにでも苦手な人、嫌だなと感じる人、合わない人はいる。
で、働く場を変えても、働き方を変えても、結局はまた、同じ人間関係のストレス、トラブルを抱え、
いつも味わう、あのお馴染みの感情を再び経験するという可能性は大いにある。
じゃあどうしたらいいの?
というこの辺りを私とミレイちゃんとの対談とオープンカウンセリングで実体験から学ぶというものだった。
ミレイちゃんは、今は産業医、心理カウンセラーという社会的立場はあるが、
子どもの頃から生きづらさを抱え、自分の居場所がどこにもない感覚、
自分を大切にできない、自分を愛せない感覚、
本当の自分が分からないという感覚にずっと悩み続けてきた。
ミレイちゃんは、幼少期に両親の不和とその結果としての離婚を経験している。
アドラー心理学を学び、実践したことでずいぶん生きるのが楽になったのだが、
心の深い部分が癒やされていない感覚、子どもの頃に充分に子どもでいられなかったというわだかまりを感じると同時に、
今までの生き方ではもう一歩も前に進めない、自分の本質とつながりたいという想いで、昨年
私の個人セッション、ワークショップ、LPL養成講座に来てくれたのだ。
25年前、病気をきっかけに心の世界の学びに深く入っていき、いつしか心の世界の仕事をするようになった私とミレイちゃんとの初コラボだった。
この日は、まさにアドラーの言う、人が心の深いところで最も求めている共同体感覚というものをわずか1日ではあったが感じてもらえたのではないかと思う。
カウンセリングやセラピーは心の病気の人のためだけではない
世間では、カウンセリングやセラピーというといまだに心の病気の人の治療と思っている人が多い。
かつては確かにそうだったし、今でもその機能はある。
しかし、この20年くらいで心の世界は大きく変わってきたのだ。
現在は、身体的には健康でも、ずっと生きづらさを抱えながら生きてきた人や、
自分らしさってなんなのか、自分は本当は何がやりたいのかがわからないという人が、
本来の自分を取り戻すため、自分の内側にある真実の声に耳を傾け、本当に生きたい人生を見つけるためにカウンセリングやセラピーを受けるケースがとても多くなっている。
つまり自己探求だ。かつての私もそれが動機で心の世界の学びに入り、
結果、人生の喜びの質が全く変わり、仕事まで、昔は考えてもいなかった心理職を生業とするようになった。
また、最近多いのは、人生に行き詰りを感じている人が、人生を次のステージに進ませるため、自分のミッション=天命や使命を探求したいなどに使っているケースも増えている。
カウンセリングやセラピーの世界は、頭の勉強ではなく、心の深い部分に触れていき、
体験から学ぶ、体験した時の心の実感を拠り所にする自己探求、自己解放がまず最初にある世界なのだ。
癒しの体験は自分の中に本当はあった愛や志につながる水路なのだということを私は体験的に思う。
過去をちゃんと過去に置いてくる心の作業は、自然な形でその人のBeing、在り方、生き方を変えていく。
それが結果として、自己成長、自己実現を促す。
私自身、そういう全人的な心の成長の地図として、カウンセリングやセラピーを位置づけている。
カウンセリングマインドがある人のコーチングは功を奏す
組織のリーダーなどもこの世界を体験するとまさにBeingが変わり、コミュニケーションの仕方が変わってくる。
共感能力が育まれていくのでカウンセリングマインドも自然についてくる。
カウンセリングマインドがある人とない人ではコーチングの成否も格段に差が出るのだ。
この日のプログラムは、二人がなぜ働く人たちにも心の学びが必要なのか、
自分たちは心の学びをすることでどんな風に人生が変わったのかについてのコラボトークから始まった。
それからミレイちゃんのアドラー式オープンカウンセリング。
アドラー式カウンセリングは企業で働く人たちには具体的な新しい選択と行動改善へのアプローチとして有効だと思う。
私は、心の仕組みについてのレクチャー、マインドフルネス、ボディスキャニング、LPL式ファミリーコンステレーション。非常に盛りだくさんな内容だった。
勇気づけになるコミュニケーション
【勇気づけになる「正の注目」10カ条】
1)長所や良いところに適切に注目する
2)「行為や行動」と「人格」を分けて考える
3)結果だけでなく、がんばったプロセスも評価する。
4)加点主義で、できるようになった部分に注目する。
5)比較は、他者とではなく昨日の自分と照らし合わせる
6)失敗は挑戦の証と考える
7)無理のない目標を設定する
8)自分の選択のなかで最善を尽くそうとする
9)何事も楽観的に考え、他に選択肢がないかと探す
10)白黒を決めるのではなく、第三の道、グレーを探す
勇気がくじかれるコミュニケーション
【勇気がくじかれる「負の注目」10カ条】
1)短所やダメなところばかりに注目する
2)行為や行動だけでなく、人格まで否定する
3)プロセスは重視せずに、結果のみで評価する
4)減点主義で、満点の状態から引き算して考える
5)比較は、いつも他者と自分を照らし合わせる
6)完璧主義で失敗を許さない
7)高すぎる目標を設定する
8)過去に自分が選択しなかった選択肢を美化する
9)何事も悲観的に考え、別の選択肢を探そうとしない
10)「正しい」「間違っている」のように白黒を決めたがる
『ナースのための勇気づけ医療コミュニケーション』(上谷実礼著)より
コーチングで前に進める人はわずか2割の人
近年、ビジネスコーチングをやる経営者は多いが、社員が真に理念を共有し、目的に向かい目標設定し、行動化して行けるのは20%の人と言われている。
基本的に自己肯定感が高く、自信があり、物事の捉え方が生来ポジティブな人たちだ。
その資質に加え、自分の夢ややりたいことがその会社でできている、あるいはできる可能性を信じられる場合、
上司や共に働く仲間達が好きで信頼できるという人の場合はコーチングでどんどん成長し成果を作って行ける。
しかし、そういう人は2割程度なのだ。
上記の、「勇気をくじく負の注目10ケ条」を自分にも人にやってしまう人は、
その人自身が自分にとっての権威、つまり、親や先生などに勇気をくじかれてきた人が多いのではないかと私は思う。
子供時代に親や周囲の大人たちに自分の話をちゃんと聞いてもらえた、気持ちをわかってもらえたという体験がない人。
自分がまるごと受け入れられ、愛してもらったという実感がない人。
親からダメ出しされることが多かった人。あれしてはダメ、これしてはダメと禁止令ばかり受けてきた人。
どんなにがんばっても褒めてもらえなかった人。
一番でなければ、特別でなければ、優秀でなければ親から認めてもらえなかった人。
親のいうことに従順に従ういい子でなければ怒られた人。
家庭が安心できる居場所ではなかった人。
子供なのに親の面倒をみるのが日常で、子供時代にちゃんと子供をやってこなかった人。
愛され、守られているという安心感がなかった人。
このような子供時代を過ごしてきた人は、人間関係につまづいたり、人とうまくつながれなかったり、
自分や人を愛し育てることが難しくなっても無理のないことではないだろうか。
だって知らないのだもの。体験がないのだもの。
もし先の勇気をくじく「負の注目10カ条」を人にやりがちな人は、
こうしたらいいという「正論」や「正解」や「やり方」を学ぶ前にすることがある。
まず負の自己イメージや人間観や世界観を持たざるえをえなかった自分に向き合うことだ。
そして、そういう在り方、コミュニケーションの仕方しかできない自分の心の背景に関心を持ち、寄り添ってくれる自分に合う心理カウンセラーやセラピストを見つけることだ。
優秀な心理カウンセラーやセラピストであれば 、
その人間観を前提にして、あなたの中に存在していながら置き去りにしてきた自分の一部、ミッシングパートを見つけて自分の中に統合するサポートをしてくれるだろう。
本来はひとつであるマインド、ソウル、スピリットを統合した“まるごとの自分”を生きるお手伝いをさせていただくのが心理カウンセラーやセラピストの仕事なのだと私は思っている。
人なんか信じられない
人からどう思われるかがすごく気になる
人がこわい
人に嫌われているような気がする
人が不機嫌になると自分のせいなんじゃないかとすぐ思う
人から自分の仕事のやり方や進め方で注意を受けただけで、自分の存在そのものを否定されたように思ってしまう
人がみな自分を否定したり、攻撃してくるように思える
人と人が諍いを起こしていると居ても立ってもいられず仲裁に入ってその場を丸く収めようとする
人の役に立っていなければ自分なんかここにいる価値などないと思う
人にNO!が言えない
人の世話をついやいてしまう
人と一緒にいると自分が自分でいられない
人が苦しんでいるのを見ると助けずにはいられない
人からの愛や承認を素直に受け取れない、つい疑ってしまう
人は結局自分の元を去っていく、いなくなると思っている
人は私のジャマばかりする
人は勝手に侵入してくる
人を頼れない、甘えられない
人の期待に応えないと見捨てられるような気がする
人が大変そうだとつい自分の欲求を抑え、自分さえ我慢すればいいのだと思ってしまう
人は、自分をわかってくれない、わかるはずもないと思う
人はめんどくさい、煩わしい、
人はあてにできない
人は裏切るものだと思う
人から拒絶される前に自分が先に拒絶する
人とつながれない
人なんか信じられない
人とずっと仲良くいられるとは思えない
自分の中の小さな人=インナーチャイルドが自動反応を繰り返す
上記の文章の中で、これは自分のことだと思ったものはありましたか?
この「人」というのは、たいていの場合、その根源にあるのは親なのです。
ためしに当てはまった文章の「人」というところに、
「お母さん」「お父さん」「両親」「親」という言葉を入れてみるとどんな感じがしますか。
大人になったあなたが、身近な人間関係(友人、恋人、夫婦、職場の人、上司、社長、学びの仲間、学びの組織の先生)との関係の中で、
瞬間的にイラっときたり、ムカついたり、ガッカリしたり、
悲しくなったり、罪悪感が出たり、無力感に苛まれたりするところは、
幼少期の親との関係性での未完了の感情、未解決の問題が他者に投影されて起きているのです。
つまり、あの頃、あの時に本当にほしかったものがもらえなかった。
本当はいやだったのにいやと言えなかった。
本当はやりたくないのにやらざるをえなかった。
こういった家族の中で自分がやっていた役割行動や、親という子供にとっての権威に対して、
自分がそこで生きるために必死に健気にやっていたことが、
報われない感じ、
うまくいかない感じ、
愛も感謝も承認も得られないでガッカリする感じとなって、
今の大人の自分の人間関係で起きてきたことに対する自動反応(感情的な反応)として現れているのです。
インナーチャイルドと言われる幼少期の心の傷と、
その傷が作ったあなたの防衛反応と生き延びるための生存戦略が、
大人になったあなたをいまだに動かしていることをまず知ることが心の学びのスタートです。
感じて、気づいて、手放して、新しい選択をして、その選択から行動をしていくと人生がだんだん変わっていきます。
続きは次回のブログで
2019年4月〜6月の活動予定
4月16日(火)〜18日(木)
◆秩父3Daysワークショップ
テーマは、「一人の変化を、世界の変化へ」〜人は皆、この世界に贈り物を持って生まれてくる〜
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◆お問い合わせ、お申し込み
4月28日(日)
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心理カウンセラー、セラピスト、研修講師、作家、東海ホリスティック医学振興会顧問
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