人と人が、存在の深いレベルで出会うということ、つながるということ

 

 

一人の人が、生涯をかけてやった仕事を、その方が亡くなったあと、

その方に「じか」に、「なま」に「触れた」人たちが語る、師についての言葉というのは、実に興味深く、面白い。

師の仕事や人となりを語りながらも、自ずと語る人の「存在」と「人生」もまた、ある響きを持って、聴く者の心に静かな波紋を投げかけてくる。

その響きの向こうに、師のいのちの仕事の哲学と存在の影響力を鮮やかに感じる。

明らかに、今の自分にとって、この人は師だと自覚できる人もいれば、

その時には、特に師と思ってついていったわけではないが、後から振り返ると、

その出会いや学びが、どれほど今の自分になるために必要な出会いだったのか、学びだったのかがわかる師もいる。

しかし、師と言っているが、私が勝手に心の中で師と思っているだけで、

実際は、弟子入りさせてくださいと言ってその門を叩いた人は一人もいない。

きっちりとした固定的な師弟関係というものを私は望んでいない。

これからも、これが私の学びのスタンスだと思う。

 

 

このブログのタイトル

「Power of Being」は、『吉福伸逸の言葉 〜トランスパーソナル心理学を超えて追求した真のセラピー』

の中にあった言葉だ。

プロとして心理カウンセラーやセラピストなど対人援助職を生業としている人たちにとっては、

「吉福伸逸」さんの存在を全く知らないという人は少ないだろう。

吉福さんを師と仰ぎ、自らを弟子と名乗る人たちが、吉福さん亡き後、

師のいのちの仕事と存在の魅力をそれぞれの言葉で語ったのがこの本なのだ。

 

 

先日、『ソマティック・ダイアローグ・ワークショップ2018春:”竹内敏晴” meets <ソマティック>』に参加してきた。

故・吉福伸逸さんと共に日本のワークショップ界の重鎮である、

故・竹内敏晴さんの伝説的な“竹内レッスン”を長年に渡って受けて、大きな影響を受けた方々一三好哲司さんや瀬戸嶋充さんや定行俊彰さん達と、

竹内さんのご著書『言葉が襞かれるとき』『出会うということ』

の真髄を高く評価し、わかりやすく伝えてくださる藤田一照さん(曹洞宗僧侶)とのお話あり、登壇者達との対話あり、ワークありの非常に有意義な1日だった。

 

 

人と人が、声や言葉を本当には交わし合っていない、今、という時代ー。

言葉になって生まれてくる前の心のふるえ。

語られている言葉の背後にあるほんとうの想いを感じ取る感性。

対人援助職をしている人には必須のこの能力は、

実は、人と人がほんとうに深いレベルでつながり、信頼という関係性を創っていくためにはとても大切な要素なのだと思う。

竹内さんにじかに触れた人も、本で触れた人も、竹内さんの世界のメッセージには、そのことについての大切なメッセージがたくさんある。

 

 

今は亡き竹内さんの仕事や人となりを語り、竹内レッスンの一部を体験する機会であった今回のワークショップはまさに、

人と人のリアルなコミュニケーションが希薄になっている現代だからこそ、

「在り方」よりも「やり方」ばかりを学ぼうとする人が多い時代だからこそなのだろう。

「損得」や「勝ち負け」や「メリットのある無し」の物差しだけが選択の基準という人々が、

果てない欲望達成ゲームに自らを搔き立てて、実は、本当は疲弊しきっている時代だからこそなのだろう。

 

 

今回の登壇者は、誰一人として、竹内さんのこと、竹内さんの仕事のことを同じ言葉で語る人はいなかった。そのことが一番面白かった。

私は、竹内さんが生きていらっしゃった時に3年ほど、折に触れて竹内レッスンに通っていた。

竹内さんは、その時の私にとっては、特に師としてこの人についていって学び続けようとしたわけではなく、

後から振り返ってみた時に、今の自分になるための礎になった師の一人だったのだということがわかった人だ。

 

 

人は言葉によって傷つけられたり、人を傷つけてしまうこともあるが、

言葉によって癒され、支えられ、希望と勇気をもらう生き物でもある。

存在の深みから、今、言葉が生まれるということ。

自分の声、言葉が相手に届くということ。

人と人が、存在の深いレベルで出会い、つながり、いのちが響く合う場が生まれるということ。

そんなことにずっと関心があった私は、今思えば、竹内さんとの出会いも必然だったのだと思う。

 

 

私は、準備された言葉や卒のない言葉より、

存在の深みから、今、言葉が生まれる瞬間を愛している。

多少荒削りでも、未成熟でも、完璧でなくても、その人の魂から紡ぎ出されたまことの言葉、

絞り出されたような真実の声を愛する。

たとえそれが呻き声でも、ひとしずくの涙でも、ため息であっても。

人と人が、存在の深いレベルで出会い、つながり、いのちが響く合う場を創ること、

かけがえのない私の生ーそのいのちの花を咲かせて生きていく場を創ることー

それが私の魂がやりたいことなのだ。

竹内レッスンを何度も受ける中で、頭の声より、からだの声を聴く方が真実の道なのだということがまさに腑に落ちてから、私の選択の基準が変わった。

それが本当に好きか。本当にやりたいことか。それは、心地いいか。楽しいか。魅力を感じるか。心の安らぎを感じるか。ワクワクするか。わけもなく心惹かれるか。情熱が湧き出てくるか。無理やフリをせず自然体の自分でいられるか。

選択の物差しが変わったら、人生が大きく変容していったのだ。

 

 

竹内レッスンは、ゴールを目指したものではなく、目標達成でもなく、答えを得るためでもなく、問題解決でもなく、スキルを学ぶためでもない。

人が人として生きるとは何か、

私とは誰かを自らの内に問いかけ、

毎回新しい自分を発見していく喜びや、

人と存在の深いレベルで出会うとは何かということにリアルに直面していく内なる旅だった。

そして、それは、私自身の今の仕事の中核になっていたのだということを今回改めて確認した。

 

 

角川学芸出版から出ていた『私に帰る旅』が、この春に新版『私に帰る旅』として、学芸みらい社から出ることになった。

帯の推薦文は、ありがたいことに藤田一照さんが書いてくださったのだ。

この日私は、出来立てほやほやの『私に帰る旅』と、私が今の私になるために必然だった出逢いと体験と気づきを書いた新刊『約束された道』を持って、

編集者である学芸みらい社の小島直人さんと共に藤田一照さんにお届けさせてもらった。

『約束された道』には、竹内レッスンでの体験と学びも書いている。

また、竹内さんに長年学んだ後に独自のワークショップ「賢治の学校」を主宰されていた、今は亡き鳥山敏子さんのことも書いた。

ワークショップというのは、自己探求、自己解放、自己成長、自己発見の場だ。

同時に意識の目覚めを促す場でもある。

ワークショップという学びのかたちを日本に根付かせた創成期のトップリーダーである吉福さんや竹内さんや鳥山さんがもういないのだ。

しかし、第2世代、第3世代が台頭している時代でもある。

今の時代に生きる我と他者と世界の課題に向き合いながら、

私と他者、私と世界という二元の分離意識を超えて、ただ一つの生命、意識に目覚めていくというテーゼを抱きながら。

 

 

私に「藤田さんと伊藤比呂美さんの対談集『禅の教室』は面白いですよ」

と勧めてくれたのは小島直人さんだ。

そして、小島直人さんはこうも言っていた。

禅僧というと厳しそうな人、堅そうな人というイメージを勝手に抱きがちですが、生身の藤田さんは真逆です。

では「柔らかい」のかというと、むしろ「絶対的に柔らかい」と言いたい人です。

禅に、もしコンピュータのOSのようなものがあるとしたら、藤田さんはOSのバージョンを更新される方なのだろうと思っています。

覚醒とか気づきを、心だけの問題にするのではなく、

「からだ」まで含めた問いの場を立てて、探求する。

そのように問いの場を拡大、拡張して、誰もが実行できるような禅の姿を伝えてくださっている方と思います。

それぞれの人が、自身の諸々の条件のなかで、一つ一つ経験しながら、納得していく。

そのプロセスは「賢くなる」とか「上手くなる」というより、愚かさを洗練する、ぎこちなさを洗練する、という感じを受けます。

藤田さんはその過程に丁寧に伴走してくださる感じがします。

力士が「股割り」のような鍛錬を経て、土俵上のあの激しい運動に耐えられる体になるように、

禅僧の方々は非常に厳しい修行を経験して、どんな風が吹いても倒れない樹木のような勁(つよ)さを備えた人になるのだろうなという印象があります。

でも、堅いのではない。柔らかくて、自在です。

「生きるとは何か」と問うより、「どのように生きるか」と問うた方が、きっと、毎日の生活に生きる知恵が出てくる。

この「どのように」という問いを、藤田さんは幾つもの、きめの細かいフェーズに分けて、順序立てて教えてくれる。

それを通して、これまでは堅まっていて動かなかった関節が、柔らかくなる感じです。

そして、いわば、生きることそのものの関節が増えていく。

結果的に、とても勁くて柔らかい、自在な心身になる。

絶対的に柔らかい人という印象は、そうした智慧を伝えてくださる藤田さんへの憧憬でもあります。

 

 

4月17日(火)、午後18時30分から、朝日カルチャーセンター新宿教室で、

藤田さんと伊藤比呂美さんの対談があるので行こうと思っています。

伊藤比呂美さんは青学(青山大学)在学中から、性と生殖に関する過激な詩を発表していて注目を浴びていた人だったし、

一方でお経マニアで仏教の教えの現代語訳もやっている人だ。

私は、子育て中、伊藤比呂美さんの「良いおっぱい、悪いおっぱい」の育児エッセイで大いに笑わせてもらい、子育てが楽になった体験がある。

このお二方の対談とあらば行くしかありません。

朝日カルチャーセンター 『伊藤比呂美×藤田一照「正法眼蔵 有時」味読ライブ 第4弾』

 

 

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『約束された道』
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岡部明美公式サイト

近々のワークショップ

●埼玉県・秩父ワークショップ

開催日:4月13日(金)~15日(日)2泊3日

●神奈川県・湘南ワークショップ

開催日:6月29日(金)~7月1日(日) 2泊3日

「ワークショップ」「個人セッション」「LPL養成講座」の情報はこちらをご覧ください。

http://www.okabeakemi.com

 


 

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