美しい国スイスを旅して感じたこと

美しい国スイスを旅して感じたこと

 

東京の茹だるような暑さを振り切り、思い切って来たスイスの夏は

なんて爽やかで心地よいのだろうとまず肌感覚で感じた。

スイスは日本と同じように四季のある国だが、本当に心地よくて美しい国だ。

旅の前半にいたチューリッヒは、日本で言えば東京だ。

大都市なのに時間がゆったりと流れている。

何気ない路地裏や坂道の石畳み、

個性溢れる教会や家並みは、

中世の建築がそのまま残されていて、街並みが、そのまま芸術作品のようだ。

川の水もきれいで魚が泳いでいるし、白鳥もかる鴨の親子もスイスイ泳いでいる。

路面電車、車、自転車、徒歩で歩く人が渾然一体なのだが、車が大きな顔をして走っていない。

人間が優先されている街づくりだと感じた。

一番驚いたのは、駅のホームと道路が地続きで区切りがないこと、改札がないことだった!!

 

 

スイスは、「永世中立国」として20世紀の戦争へ参加をしなかったため、

中世から手つかずの美しい旧市街がスイスの各地に残っている。

アルプスの大自然と旧市街散策の両方を楽しめることがスイス旅行の醍醐味だ。

 

 

スイスは山も森も湖も川も、そして人々が暮らす家も美しい。

「大自然」と「人間が造った建物」が、

こんなに見事に調和している環境というのは、なんて心地いいのだろう。

お伽話に出て来るような可愛らしいお家がファンタジーの世界ではなく、

実際にスイスに暮らす人々の日常空間なのだから驚く。

 

 

とにかくスイスにいると「ゆとり」というものを感じる。

あくせくしていない。

バタバタしていない。

ガツガツしていない。

ギラギラしていない。

暮らしを、人生を楽しんでいる感じだ。

お店の看板も店の作りも家の造りも、とても遊び心を感じる。

夏のスイスは、夜9時頃まで明るいので、

夏はお店の外のテラスで皆食べたり、飲んだり、対話を楽しんだりしている。

仕事が終わったビジネスマンや恋人たち、

そして中高年のご夫婦のそんな日常の心地いい時間の過ごし方を見ていると、

見ているこちらもほっこりする。

会社(仕事)と家庭の往復が日常という日本人は多いと思うが、

文化の香りがする第三のスペースがあるというのは、

とても贅沢な時間の過ごし方だなと思った。

 

 

スイスは、自然の美しさに恵まれているが、

「与えられた」その美しさを保つために、

スイス人一人ひとりが観光立国の国の政策に沿って、

並々ならぬ努力をしていることがわかる。

大通りに面した家々は、シャレー風の木造づくりで統一され、

窓という窓には必ずといっていいほど、

赤やピンクや白のゼラニュウムなどの花々が飾られている。

見る側の私たちには非常に心地良いけれど、

管理する方は、その手入れが相当に大変だろう。

花選びから始まって、朝晩2度の撒水は欠かせないという。

 

 

花や庭の手入れに関しては、市町村の条例や環境保護団体の規則などによって、細かく規制されているようだ。

庭の手入れを怠った場合には、町から庭師が派遣され、罰金とその実費が請求されるという。

住宅の建て方(外壁、屋根の材質、仕様)、洗濯物の干し方(通行人から見える場所には、洗濯物を干さない等)なども、市町村の条例で定められている。

観光指定地域では、排気ガスの排出を防ぐため、ガソリン車の乗り入れが禁止されている。

 

 

新田次郎は、著書『アルプスの谷 アルプスの村』に、こう書いている。

「実際にいつ来ても、いつ見ても、スイスは美しい。スイスというところは、一木一草にいたるまで、意味あり気に生えている」

確かにそのとおりだった。チューリッヒの町に滞在中、公園に行っても、街を歩いていても、森へ行っても、川べりを散策してもこの感じを受けた。

 

 

チューリッヒから電車で1時間くらいのところに

中世18世紀に建設されたザンクト・ガレンを象徴する建物がある。

スイスのバロック建築の傑作のひとつで、2本のそびえ立った塔や、

バロック式の装飾と天井画で彩られた内部には圧倒された。

 

 

ザンクト・ガレン修道院や付属図書館は、ベネディクト会の主要機関だったゆえに、

世界最古の「建設設計図」や「17万冊」にも及ぶ貴重な蔵書が集まった世界遺産なのだ。

なんだかここは、ハリーポッターのような世界で、まさに異次元空間だった。

 

 

一緒に行ったグループのある男性が(ふだんはとても理性と知性に溢れた方です)

「ここに入った瞬間何か熱いものが込み上げてきた。ここにずっといると泣きそうになる。なんなんだ、この感覚は?!」

と言ったのを聴いて私は「うふふ」でした。

かくいう私も修道院を見ているだけで、なぜかザワザワしたのですが(笑)

理性と知性に溢れる真面目な方が、時おり見せる、

「ちょいワルおやじ」や、「ちょいスピおやじ」は、

なかなか人間味があっていいです(笑)

ちょい、であることがミソですが。

 

 

チューリッヒと言えば、心理職を生業としている人は、ここは行ってみたい場ではないでしょうか。

そう、「ユング研究所」です。

私の好きな河合隼雄さん(心理学者)や、アーノルド・ミンデルさん(プロセス指向心理学創始者)も、

このユング研究所で何年にも渡り教育分析を受け、ユング心理学を学んでいたわけです。

この建物を見た時は、後世の心理学の世界に多大なる影響と功績を残したお二方が、

この建物の中で長い時間学ばれていたのかと思うと感慨深いものがありした。

(注)
河合 隼雄:京都大学名誉教授、国際日本文化研究センター名誉教授。元文化庁長官。 専門は分析心理学、臨床心理学。日本人として初めてユング研究所にてユング派分析家の資格を取得し、日本における分析心理学の普及・実践に貢献。

アーノルド・ミンデルさんについては過去ブログ「私たちの人生を導いている不可思議な力」に書きました。

私たちの人生を導いている不可思議な力

 

 

海外旅行に行く時は、いつも5冊くらい本を持っていくのだが、

今回私は、ユング研究所に行くつもりだったので、

河合隼雄さん、ミンデルさんのご著書の中でも特に好きな

「心の最終講義」と「ワールドワーク」をバックの中に忍ばせた。

 

 

ユング研究所のそばに美しい川と緑豊かな公園があります。

この川のほとりを歩きながらお二人は思索を深めていらしたのかと思いながら歩いていると、とても胸が熱くなるのでした。

時にはビキニ姿のお嬢様方の姿に迷いが生じたこともあったのでしょうか(笑)

立派な人であっても、そういう時があってもいいよね、人間だもの。

この川に次々に飛び込んで泳ぐ人たちがいるのには、ちょっと驚きました。

 

 

翌々日はチューリッヒから少し離れて山岳地帯に行きました。

ここははまさに「アルプスの少女ハイジ」の世界。

ジブリの宮崎駿監督と高畑勲監督のコンビらスタッフが、

スイスで約1年間のロケハンを行い制作を手がけた「アルプスの少女ハイジ」は世界的な大ベストセラーになりました。

スイスは観光立国だが、このアニメの大ヒットのお陰で日本人観光客が急増したようです。

 

 

アルプスの山並みも森も湖も息を飲むほどの美しさなのだが、

ただ自然が美しいだけではない。

大自然への「畏怖」と大いなる存在(神)への「憧憬」と「畏敬」の念が、

この国の美しい環境や建築や芸術などのクリエイティビティの源なのだと思う。

品のない電飾や看板、落書きや張り紙などの環境のノイズが、スイスには、ほとんどないのです。

 

 

魅力的な人に共通するのは、

そこだけは変わったらだめだよ、

それを無くしたらあなたじゃないよ、

というものを持ち続けていながら、

内側では変わり続けている人、成長し続けている人なんだな、

ということをいつも思うのですが、

「場も同じなのだ!」

ということを今回スイスに来て思いました。

「不易流行」という言葉があるけれど、

決して失ってはならないもの、

決して変えてはいけないもの、

大切に守り続けなければならないものと、

新しい時代を創造し続けるためのイノベーションとのバランス、

それこそが大事であることをスイスが見せてくれているように思えたのです。

 

 

スイスはそういう意味では、古さや過去の中にある、

失ってはいけない永続的価値と、

すでに与えられている自然との共生以外に、

持続可能な社会を作り続ける道はないということを教えてくれている。

その上に立ったイノベーションであれば、

そこに思想、理念、哲学、美学がベースに置かれた創造的価値が生まれる。

古いものをうまく活かし、新しいものをうまく調和させ、

そこにあるものが無理なく統合されている場というのは、命が吹き込まれている。

場がイキイキとした生命力に溢れているので、

そこにいるだけで私たちは、癒され、元気になるのだ。

それこそが持続可能な社会を創り続ける原動力なのだと思う。

全ての命(存在)の源は一つであり、

それゆえ命は一つらなりであり、

あらゆる命(存在)が生かされる社会の創造原理とは、

大自然の法則に従うことなのだということを改めて実感させられる。

この視点、視座が今や地球規模で望まれているということなのだ。

 

 

日本は経済的に物質的に豊かな国になったけれど、

今は少し立ち止まり、深呼吸して、

来し方行く末をしっかり見つめる時なのだと思う。

個人の人生にとって

「本当に豊かな人生とは何なのだろう?」

「私にとって幸せな人生とは、自分がどう生きることなのだろう?」

ということを見つめ直すことであり、

この閉塞した社会に違和感を感じ、生きづらさを感じて生きている人にとっては、

新しい社会の青写真を自分自身が描くことではないだろうか。

「人類、人間にとって真に豊かで幸せを感じられる社会とはどんな社会なのだろう?」

という問いだ。自分の内側に問いを立てている人は、自ずと答えに出会っていくものだから。

海外旅行をする度に、日本という国、

そして日本人が持っている素晴らしさに気づくと共に、

日本という国の問題点や課題にも気づかされる。

もちろんスイスにだって光があれば闇もあるだろう。

暮らした人でなければわからない問題というものは当然あるとは思う。

通りすがりの旅人には決して見えない、わからないものが、

そこで生きている人にはわかっているものだ。

陰陽の法則は、全ての存在、場、現象に当てはまるものだから。

 

 

2年前のスウェーデン引き続き、今回のスイス旅行でも、

感動と共に、「じゃあ自分はどうする?」「どう在る?」「何ができる?」

ということに向きあわざるをえなくなる。

若かりし頃の海外旅行は、ただ、

「わあ、すごい!」「きゃあ、きれい!」「めっちゃ感動!」「気持ちいい!」
「わーい、楽しい!」「これ美味しい!」

だけだったなあ、、、

こういう視点で世界を見られるようになってきたということは、

ただ年をとってきただけではなく、人間として少しは成熟してきたのかな。

最近は、海外に行く度にいつも、日本人という枠を超えた、

地球市民なんだよなあ私たちは、

という意識を持つようになってきた。

地球市民としての自覚として、生態系を守ること、地球環境への配慮、自然との共生などが目標とされる「SDGs」への関心が生まれてきたことも含めて。

時代の意識は確実にSDGsの方向に流れていると私は感じている。

本当に地球レベルで、世界レベルで、大きな意識のパラダイムシフトが今起きているのだから。

SDGsに関して書いた過去ブログ

誰ひとり置き去りにしない 〜What are the SDGs? 〜

本来の日本はサスティナブルな社会だった

スイス旅ブログは長くなるので全編、後編に分けて書きました。

後編は、1週間後にアップします。

 

 


 

2019年8月〜11月の活動予定

8月30日(金)〜9月1日(日)

◆千葉県・勝浦3Daysワークショップ

テーマ:自分の才能と強みと自分らしさを知り
イキイキとした人生を生きる。

自分の才能や強みはどこにあるのだろう?

自分らしさって何だろう?

自分の魅力はどこにあるのだろう?

そんな問いを持ちながら今を生きている人・

本気でかけがえのない自分の人生を生きたいと思う人に最適のワークショップです。

◆お問い合わせ、お申し込み

千葉県・勝浦3Daysワークショップ


◆アドラー心理学のベストセラー作家であり企業研修講師であり心理カウンセラーである小倉宏さんと産業医であり心理カウンセラーの上谷実礼さんと岡部明美の三人のオープンカウンセリングの1Dayワークショップ。

「仕事の悩みが軽くなる!心にアプローチする1DAYワークショップ」

2019年9月21日(土)14:00~20:30

会場:亀戸文化センター

◆お申し込みはこちらから: お申し込みフォーム


◆群馬県・草津3Daysワークショップ

テーマは 人間関係・パートナーシップ・コミュニケーション。

〜親子、夫婦、恋人、友人、上司、部下、同僚、ビジネスパートナーとの関係性〜

人生の悩み、苦しみのほとんどは、人間関係によるものです。

このワークジョップでは自分を生かし、相手を活かし、幸せになるコミュニケーションを体験的に学ぶワークショップです。

◆お問い合わせ、お申し込み

群馬県・草津3Daysワークショップ


◆「ボス型マネジメントからの脱却、ミッション経営の切り札1on1実践ワークショップ」

小倉広&岡部明美&上谷実礼

2019年11月29日(金)~12月1日(日)

湯河原リトリートご縁の杜

◆お問い合わせ、お申し込み

神奈川県・湯河原3dayワークショップ

岡部明美公式サイト

 

「ワークショップ」「個人セッション」「LPL養成講座」の情報はこちらをご覧ください。

http://www.okabeakemi.com

 


書籍&CDのお知らせ

 

『私に帰る旅』
(学芸みらい社)


角川学芸出版から刊行された本書が、
装幀も新たに学芸みらい社から刊行されました。
Amazonで購入できます
全国の書店でもご注文できます

『約束された道』
(学芸みらい社)


2017年6月刊行と同時に増刷。
2018年4月第3刷決定。
Amazonで購入できます
全国の書店でもご注文できます

 

『もどっておいで私の元気!』
( 善文社)


1996年5月刊行から22年間のロングセラー。第12刷。
Amazonで購入できます
全国の書店でもご注文できます

 

『いのちの花』
(CD)


¥2,000
CDは講演会、ワークショップ等で販売しています。必要な方は、Facebookのメッセンジャーにご連絡下さい。

 

 

 

投稿者プロフィール

岡部明美
岡部明美
心理カウンセラー、セラピスト、研修講師、作家、東海ホリスティック医学振興会顧問
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