心は見えないし、愛は形がないのだから

心は見えないし、愛は形がないのだから

 

「感情」

感情をコントロールできるようになることが大人になることだと思っていた。

しかし、私がしてきたことは、感情のコントロールではなく、

ネガテイヴ(否定的)な感情の抑圧だったことに気づいた。

感情の抑圧と病気が深い関係にあることを学んだ。

悲しみや怖れ、不安、怒り、憎しみ、孤独感。

こうした心に痛みをともなう感情が溢れてくると、

私はすぐ前向きな思考、肯定的な思考に切り替え、

ネガティプな感情を感じることから逃げ回った。

それらの感情は、決して前向きな思考によって消されたわけでも、癒されたわけでもな
く、

心の奥底に澱のように沈殿していただけだった。

「感情は、喜びであれ悲しみであれすべて心の事実。

自然現象と同じ。だからどんなネガティヴな感情であっても、

その感情に気づき、感じ尽くしてみれば薄れてゆくし、過ぎてゆく。

その感情が癒されたときには、新たな意味が生まれることさえある。

ネガティブな感情を排除しよう、なかったことにしようと、

自分の本音に蓋をしてしまうと、その感情はいつまでも心の中に滞ってしまう。

怒りや悲しみや恐れや喜びの感情に豊かに触れて、

自分の感覚や感情という”事実”を生きる手掛かりにしていると、

自分を見失わずに生きていけるよ」

こう言ってくれる人に出会えたとき、頭の中にできた腫瘍が溶けてゆくのを感じた。

夢の中でさえ、本物の涙が流れるほど、

あらゆる感情は大切な大切な私の心そのものだった。

『もどっておいで私の元気!』(岡部明美著・善文社)より

 

「感じる世界」を取り戻すことから

以前「プラス思考の罠」というタイトルでブログを書いたことがあるが、

プラス思考の罠

これは多くの現代人がはまっているものだと思う。

感情を抑圧したまま無理にプラス思考しても、

大人になった今の自分の対人関係において「自動反応」を起こしている根源的なところを見ていかないと、

人を変えていつも同じような感情、いつも同じような結末になってしまうからだ。

もし「人生を変えたい」「本当の自分を生きたい」「次のステージに行きたい」と本気で思うのなら、

その最初の一歩は「感じる世界」を取り戻すことからだ。

私たちの内側はみんな繊細であるがゆえに無防備だった幼少時に、

本当は起きていた感情を感じないようにして生き延びてきたのだ。

そこに置き去りにされた自分がいて、その自分が現れたがっている時に人生の大きなターニングポイントになるような出来事が起きてくることが多い。

私の場合はたまたま病気だったが、人によってはそれが「リストラ」だったり、「倒産」「失恋」」「離婚」だったりする。

大きな痛みを感じるような出来事が起きた時は、「自分に帰る旅」の始まりなのだ。

その最初は自分のルーツである親との関係性の見直しからだ。

私もここはとことん見てきた。

過去を過去に置いてこれるようになった時に今ここを全面的に生きられる自分になったのだ。

 

家族の中の光と闇

どこの家庭にもあるように、私の家の家族史の中にも、

光も闇も、喜びも悲しみも、絶望も希望もあった。

私という人間が生まれた場所、育った場所、生きてきた場所。

それが、どれだけ自分
に影響を与えてきたかは計り知れない。

生まれた家を離れてからずいぶんと長い時間が過ぎたので、

もう思い出すこともなくなっていた昔の出来事が、

大病をきっかけに自分に向き合い始めたら、

葬られてなかったことにしてきた感情が溢れるようになった。

 

パートナーとしては最悪だった

私の家庭は、母の明るさと父の善良さで救われている面があったのだけれど、

この二人が極めて仲が悪かった。

とにかく、ことごとくぶつかるのだ。

父も母も、それぞれはすごくいい人だし、魅力的な人間なのに、パートナーとしては最悪だった。

私は、父も母も好きだけれど、両親という”対“で見たときには、

憎しみさえ覚えるほどにこの二人の関係性に悩み苦しんできた。

私は、家庭内の不調和な雰囲気に耐えられなくて、

ピエロの役をやったり、争い事が起きれば平和交渉に乗り出し、

大きな問題が起きてくれば判事になり、こまごまとした事件の時は使いっぱしりをやっていた。

 

お金を稼ぐことがどんなに大変か

私は、争いのたえない両親に間に挟まれて、父が母の愚痴を言えば、

母の良いところを父に話し、若い頃に一目ぼれした母のどんなところが好きで結婚したのかを父に聞いてみたりするような子供だった。

反対に、母が父の愚痴をこぼせば、父がどんなに家族のことを思って仕事をしているか、

お金を稼ぐということがどんなに大変なものか、

父にどんな才能やいいところがあるかを母に話していた。

「お父さんは照れ屋だから、言葉でうまく表現しないけれど、お父さんがどんなにお母さんを愛しているのか、感謝をしているのか、私にはわかるよ」という話をよく母にしていた。

私は、評いのたえない両親に間に挟まれて、父が母の愚痴を言えば、母の良いところを父に話し、若い頃に一目ぼれした母のどんなところが好きで結婚したのかを、父に聞いてみたりするような子供だった。

反対に、母が父の愚痴をこぼせば、父がどんなに家族のことを思って仕事をしているか、お金を稼ぐということがどんなに大変なものか、父にどんな才能やいいところがあるかを母に話していた。

「お父さんは照れ屋だから、言葉でうまく表現しないけれど、お父さんがどんなにお母さんを愛しているのか、感謝をしているのか、私にはわかるよ」という話をよく母にしていた。

 

心は見えないし、愛は形がないのだから

おそらく母は、時々でいいから、父から、愛や感謝の気持ちを言葉で表現してほしかったのだと思う。

でも、昭和一桁世代の男である父は、「こっぱずかしくてそんなこといちいち言葉でなんか言えるか」と思っているみたいだった。

心は見えないし、愛は形がないのだから、

時々は、言葉で伝えることって大事なことなのに、

どうして男というのは、それがわからないのだろう。

それだけで、相手のいいところを再確認できたり、

自分の中にある、「やっぱり好きだ」という気持ちに気づけたり、

「自分の中にも至らないところが多々あったな」と、

反省できたりもするのに。

 

日々の生活に追われて忘れてしまったこと

私は、父と母に思い出してほしかったのだ。

最初は、互いのことを大好きだったということを。

日々の生活に追われて、忘れてしまったこと、

どんなところが気にいって結婚しようと思ったのかを。

今は、それが見えなくなっているだけなのだということを。

私は、姉弟の中で一番わがままで、自分勝手な人間だとずっと思っていたのだけれど、

子供だった自分を思い出してみると、両親の間をとりもってばかりいた自分が、

実はすごくけなげな子で、良い子をやってきたのだということを、初めて実感として感じた。

そうしたら涙が次から次へあふれてきて止まらなくなった。

それは、今の自分ではなくて、泣けなかった子供時代の自分がおいおい泣いているみたいだった。

 

どうしてそんなに弱い人間なのか!

同時に子供だった私は、両親の板ばさみにあうことが本当はとてもつらかったのだという”生の感情” が初めてこみあげてきた。

母に対しては、「なぜ、父の淋しさや悲しみがわからないのか」という怒り。

父に対しては、「なぜ、すぐお酒に逃げるのか。

どうしてそんなに弱い人間なのか。

男のくせに、大人のくせに。

子供の私を保護するのが親の役目ではないか」

という、父の弱さへの怒りがあった。

 

頼りたいのは私の方ではないか。

小さかった私の心は、争いが起きる度に「家族が壊れてしまうんじゃないか」

と不安でたまらなかったのだ。

なぜ、父も母も、子供の私を頼りにするのか。

頼りたいのは、私の方ではないか。

私は子供なんだから。

私は、酔って大声を出す父の声に固え、

ヒステリーを起こす母の声を嫌悪し、

なぜ大人なのに自分の感情をコントロールできないのかと本当はすごく怒っていたのだ。

私が感情的な人が苦手だったり、自分の感情をコントロールできない人が嫌いなのは、

こういうところから生まれたものだったのだと思った。

私は、子供時代に、両親や周囲の大人たちが、

感情をむき出しにして、いがみあっている姿を見過ぎてきたために、

否定的な感情を嫌悪し、感情をぶつけ合うことを恐れるようになってしまったのだ。

私は、思考レベルでの議論やケンカはいくらでもできる。

でも、深い怒りや悲しみや不安になると感情が凍りついてしまって、

全く言葉が出なくなってしまうというのは、こういうところから生まれたのかと思った。

 

 


 

◆東京 岡部明美・大塚あやこコラボ1dayワークショップ
「人生を変えたい人のためのはじめの1歩」

日  2020年4月26日(日)
開場 13時30分
開始 14時
終了 19時ごろ

場所 中野サンプラザ 研修室3

東京都中野区中野4-1-1
03-3388-1174
(JR中野駅前)

参加費 ¥22,000(税込)

◆お問い合わせ、お申し込み

http://www.okabeakemi.com/workshop/#work29


 

 

岡部明美公式サイト

 

「ワークショップ」「個人セッション」「LPL養成講座」の情報はこちらをご覧ください。

http://www.okabeakemi.com

 


書籍&CDのお知らせ

 

『私に帰る旅』
(学芸みらい社)


角川学芸出版から刊行された本書が、
装幀も新たに学芸みらい社から刊行されました。
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『約束された道』
(学芸みらい社)


2017年6月刊行と同時に増刷。
2018年4月第3刷決定。
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『もどっておいで私の元気!』
( 善文社)


1996年5月刊行から24年間のロングセラー。第12刷。
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『いのちの花』
(CD)


¥2,000
CDは講演会、ワークショップ等で販売しています。必要な方は、Facebookのメッセンジャーにご連絡下さい。

 

投稿者プロフィール

岡部明美
岡部明美
心理カウンセラー、セラピスト、研修講師、作家、東海ホリスティック医学振興会顧問
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