吉田拓郎&中島みゆきの名曲「永遠の嘘をついてくれ」

吉田拓郎&中島みゆきの名曲「永遠の嘘をついてくれ」

高校時代からの友人のゆり(水月悠理香・コクーンボーカル)から、

「最近、拓郎のYouTubeばっかり見てるんだとメールがきた。

コロナでコンサートがことごとく中止になってしまったのはコクーンも他のアーティストと同様だ。

コクーン20周年記念コンサートができなくなったのはどんなに残念だったろう。

その後、12月12日にやることが決まったと聞いて安心した。私ももちろん行く。

 

創造の氷河期

「もどっておいで私の元気!」の朗読CDで歌と演奏をしてくれているのもコクーンです。

ゆりからのメールに「永遠の嘘をついてくれ」が切なくて泣けるわ。特に拓郎と中島みゆきが一緒に歌ってるのいいよね」と。

私もこのつま恋でのライブは大好きで何度もYouTubeで見ている。

アーティスト、クリエイターなど創造と表現を仕事にしている人は、ある日パタっとものを創れなくなってしまうことがある。

バーンアウトという創造の氷河期だ。

シンガーソングライターの草分け吉田拓郎にも、もう歌が創れなくなってしまった時期がある。

 

もう君の“ファイト”のような曲は作れない

人に作曲を依頼することなどあり得なかった吉田拓郎は、行き詰まってしまった時に中島みゆきに詩と曲を創ってほしいと依頼した。

「俺はもう君の“ファイト”みたいな曲は創れなくなってしまった」と。

中島みゆきにとって吉田拓郎は永遠のヒーローで心の恋人で若い頃はずっと追っかけだった。

吉田拓郎がいなかったら今の中島みゆきはいない。

ボブ・ディランがいなかったら吉田拓郎がいないように(若い世代にはちんぷんかんだよね(笑)

 

再生と復活

自分にとってのヒーローが、歌が創れなくなって苦悩し、自分に曲を依頼してきた瞬間、中島みゆきは何を感じたのだろう。

出来上がった曲「永遠の嘘をついてくれ」は、みゆきの拓郎へのラブレターのようだ。

詩も曲もまるで拓郎が創った歌のようで驚く。

この曲によって拓郎は長い創造の氷河期を脱し、再生・復活を遂げたのだ。

歌詞は、自分が捨てられることをうすうす感じた女が、

愛した男に「永遠の嘘をついくれ」と願う。

本当のことは知ることは、深い悲しみや惨めさや絶望に変わってしまうから。この女心はわかるな。

男はやさしさなのか、優柔不断なのかは知らぬが、まだきっぱりと女に訣別を告げてはいない。

君よ永遠の嘘をついてくれ

いつまでもたねあかしをしないでくれ

 

やりきれない事実のかわりに

「永遠の嘘をついてくれ」

ニューヨークは粉雪の中らしい

成田からの便は まだまにあうだろうか

片っぱしから友達に借りまくれば

けっして行けない場所でもないだろう、ニューヨークぐらい

なのに 永遠の嘘を聞きたくて

今日もまだこの街で酔っている

永遠の嘘を聞きたくて
今はまだ二人とも旅の途中だと

君よ 永遠の嘘をついてくれ

いつまでもたねあかしをしないでくれ

永遠の嘘をついてくれ
なにもかも愛ゆえのことだったと言ってくれ

この国を見限ってやるのは俺のほうだと、

追われながらほざいた友からの手紙には、

上海の裏街で病んでいると見知らぬ誰かの下手な代筆文字

なのに 永遠の嘘をつきたくて

探しには来るなと結んでいる

永遠の嘘をつきたくて
今はまだ僕たちは旅の途中だと

君よ 永遠の嘘をついてくれ

いつまでもたねあかしをしないでくれ

永遠の嘘をついてくれ

一度は夢を見せてくれた君じゃないか

傷ついた獣たちは最後の力で牙をむく

放っておいてくれと最後の力で嘘をつく

嘘をつけ永遠のさよならのかわりに

やりきれない事実のかわりに

たとえ くり返し何故と尋ねても

振り払え風のようにあざやかに

人はみな望む答えだけを聞けるまで尋ね続けてしまうものだから

君よ 永遠の嘘をついてくれ

いつまでもたねあかしをしないでくれ

永遠の嘘をついてくれ
出会わなければよかった人などいないと笑ってくれ

 

創造に向かうエネルギーの元

人はみな望む答えだけを聞けるまで、尋ね続けてしまうものだから、、、

やりきれない事実のかわりに、、

一度は夢を見せてくれた君じゃないか、、、

しびれるなぁ、こういうフレーズは(o^^o)

失恋した時には、ユーミンや竹内まりやの歌より、傷口に塩と明太子塗りたくるようにして、中島みゆきを聴いて朝までオイオイ泣くに限る(笑)

創造に向かうエネルギーの元は、悲しみや切なさ、空虚や苦しみでであることも多い。

歌の歌詞も詩人の詩も。であればネガの体験は最大のギフトに変わりうるもの。

そんな愛の詩人のことを書いた過去ブログですが、これ私のブログの中でもすごくアクセスが多いです。

私も切なさの感情が好きだったからドラマいっぱい作っちゃたんだなあ昔は。遠い目で言う(笑)

関連ブログ

神は強情に不在し続け 私は強情に愛し続けた

 

示唆に溢れた感想とアドバイス

この文章は先にFacebookのタイムラインに投稿したものだ。

この私の投稿に拙著『私に帰る旅』と『約束された道』の編集者であり、

学芸みらい社社長の小島直人さんから下記のようなコメントがあった。

小島直人さんは、私が本を執筆中にも、まさに最高のタイミングで

私の文章や構成に対して示唆に溢れた感想とアドバイスをくれた。そのお陰で執筆が捗ったのだ。

著者の存在と世界観を心から尊重して伴走してくれる編集者に出会えることは物書きとしでは最高の幸せである。

 

生きることにつまづいた人の歌

投稿、拝読いたしました。

曲も聴きました。

「永遠の嘘をついてくれ」

タイトルがいいです。

中島みゆきさんの歌は、恋につまずいた人の歌ではなくて、

生きることにつまずいた人の歌、と感じました。

中島みゆきの、「夜会」というそうですが、

彼女のコンサートに何度も通っている友人がいます。

その友人が言っていたのですが、「中島みゆきはコンサートの度に、最初は歌が下手なんだ」と。

その話がとても記憶に残っています。

いつまでたっても、生きていること、歌うことに慣れることができない人なのかな…という印象があります。

 

「じいじいも死ぬの?」

椎名誠さんという大人気作家がいます。私も大ファンです。あけみさんも好きな作家ですよね。

この人の『大きな約束』(集英社)という作品があります。

少し、引用します。

椎名さんの息子さんで、アメリカに住んでいる岳さんとの電話のシーンです。

「こんな話を聞くと心配するかも知れないけれど、今日家族みんなで街のレストランにいってブリトウを食べていたら、店のすぐ外でチンピラ同士の撃ち合いがあって一人が撃たれた。十五歳のヒスパニックだったよ」

「死んだのか?」

「うん。三分くらいしか持たなかったな。このあたりは彼らの抗争があってときどきこういうことがあるんだ」

「風太(注:椎名さんの初孫です)は死体を見なかった?」

「ああ。でも人が死んだというのはわかったみたいだね。アメリカ人はこういうときみんな冷静で、レストランの中が大騒動になるなんてことはないからなにもショックはなかったようだけれど……」

「でもやっぱりデンジャラスな街なんだなあ、そこは」

「ウォータウンだからなあ」

「機会を見て越したほうがよくないか」

「うん」

いきなり風太くんが電話に出た。

「おにいちゃんが死んじゃった」

「そうなのかあ」

「じいじいも死ぬの?」

思いがけない質問だった。

「じいじいは死なないよ」

「死なない?」

「うん。やくそくするよ」

「やくそく?」

……です。

普通には「嘘」と言われるだろうことが、ここでは「やくそく」と言われています。

 

三つの真実より一つの美しい嘘を

もう一人、私が好きな作家、開高健さんは、著書の中で何度か次のように書いています。

「三つの真実より一つの美しい嘘を」

開高さんが、小説家として何に腐心したのかがよく分かる言葉だと感じます。

かなり以前のことですが、高校生の男の子が

「なぜ人を殺してはいけないのか分からない」

と言って話題になりました。

TVのニュース番組などでも特番が組まれたり、雑誌でも特集が組まれたりしました。

私はその高校生の言葉にもメディアの取り上げ方にも違和感があって、しばらく考え込んでしまいました。

私の結論は、「〈殺さない〉という約束をすることによって、

はじめて人間社会がうまれるのではないか」ということです。

人間社会が既に存在していて、そのなかで

〈殺さない〉〈殺してはいけない〉という「決まり」があるのではなく、

〈殺さない〉という約束をすることによって、

はじめて人間社会が生まれる。

つまり、「殺してはいけない根拠」など、無い。

まったく逆で、〈殺さない〉という約束が、

人間社会を開く「根拠」になっている。

だから、「なぜ殺してはいけないのか」という問いは本末転倒だと私は考えます。

〈殺さないという約束〉が、人間が人間であるための条件なのだと私は信じています。

正確に言えば〈殺さないという言葉〉が、

もっと言えば〈言葉というものが存在すること〉が、

人間社会の根拠だと思っています。

 

美しい嘘を創るために

こういう話は、「きれいごと」に聞こえます。

現実に、人は人を殺しているし、殺されているからです。

言葉はいつでも、「そんなきれいごとを言っても…」と言われてしまう。

まさに、「嘘」だと思われる。

だからこそ、これに懸けてみようと思えるような、美しくて、勇気が湧く、

「永遠の嘘」が必要なんだと思っています。

「三つの真実より一つの美しい嘘を」と言った開高さんは、

ベトナム戦争、コンゴ動乱、文化大革命時代の中国と、戦争・内戦・革命の地にみずから体をはこんで、酷薄な現実を見てきた人です。

開高さんは、「私は小説家。小説は、大説でもなく、中説でもない」とも言っています。

大味なイデオロギー(大説)ではなく、

密度のある小さなエピソードを積み重ねる(小説)を書きつづけた人だと思っています。

美しい嘘を創るために開高さんが引き受けたのは

「現実を直視すること」と、

「美しい嘘を創るための想像力の戦争」です。

それは暴力から慎重に身を遠ざけるためのものだと思っています。

開高さんは、こんなことも書いています(よく色紙にも書いていたそうです)

「明日、世界が滅びるとしても、今日、君はりんごの木を植える」

希望が到来するように、今、行為をしよう──。

そんなふうに私は理解しています。

いつも自分に言い聞かせている言葉です。

、、、、、、、、、、

私がただ好きでよく聴いている中島みゆきと吉田拓郎の「永遠に嘘をついてくれ」

のことを書いただけのわりと軽いノリで書いたものに、

これだけのコメントをくれる小島直人さんの感性と知性と世界観に唸るのでした。

 


 

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