「ヘイト(憎悪)を生まない」They are us(彼らは私たちである)

「ヘイト(憎悪)を生まない」They are us(彼らは私たちである)

 

このブログは前回のブログの続きです。

新しい時代の風〜フェミニンリーダーシップ〜

今回のコロナで世界の注目を集めたもう一人は、ニュージーランド首相のジャシンダ・アーダーン。

ジャシンダ首相の初動の速さ、明確な判断力と決断力、

様々なSNSを使った国民へのハートからのメッセージ、

国民とつながる力、共感力、発信力といったコミュニケーション能力も世界中で高く評価された。

生存、サバイバルという次元では国民の命を守りながら、国民の「生活」と「経済」を同時に守るということに全力を尽くした。

多くの国のリーダーが力を尽くしたのもサバイバルの次元であったが、

ジャシンダ首相の行動には、新しい世界の「真の幸福と豊かさ」に対する明確な理念とビジョンがあった。

そしてそのフェミニンリーダーシップの質の中でも、特にコミュニケーション能力がずば抜けていると世界は評価した。

ジャシンダ首相は、500万人のニュージーランド国民のことを「チーム」と呼ぶ。

チームが全体で幸せに暮らせる国を目指しているのだ。

 

普段着でごめんなさいね

現在39歳のジャシンダ首相は、世界で初めて在任中に産休を取得した首相だ。

前回のブログでもフィンランドのサン・マリン首相が赤ちゃんを出産直後に首相になったこと、

夫と半年づつ交代で産休を取ったことを書いたが、政治の世界ではこれは画期的なことだ。

最近は日本でもかなり改善されてきてはいるものの、

まだまだ女性にとっては、出産や育児が社会的活動を続けていく上でネックになっていることが多い。

ジャシンダ首相は、世界的にコロナ危機が大きくなっていった時に

自宅(首相官邸)から動画を使って国民にメッセージを送った。

モスグリーンのトレーナーを着て

「普段着でごめんなさいね。今まで子ども寝かしつけていたので」

と言いながら、自らのFacebookページで動画配信をした。

ジャシンダ首相は、子どもたちからの不安な声にも丁寧に答えていたのが印象的だった。

政治と暮らしが分かれていない。

政治家と国民が心のレベルでつながりコミュニケーションを取っている。

私はこの動画を見て新鮮な驚きを覚えた。

自宅(首相官邸)で犬を抱きながらくつろいでいる動画をアップした我が国の首相も

日頃からこのような姿勢があったとしたら、あそこまでバッシングされなかったのではないだろうか。

動画【ジャシンダ・アーダーンNZ首相による普段着メッセージ】

 

「GDPの成長」は国民幸福指数には繋がらない

今年1月のダボス会議で、ジェシンダ首相は、「愛や思いやり」「共感・つながり・幸福」に焦点を当てた政治を行うことで国を変えていくと宣言した。

そして早くから「GDPの成長」は国民幸福指数には繋がらないと宣言して、「国民幸福予算」を財政確保した。

昨年3月、ニュージーランドのクライストチャーチにある2つのモスク(イスラム教の礼拝堂)が、

白人至上主義者によって襲撃され、51人が犠牲となった事件があった。

この時のジャシンダ首相の対応について世界が賞賛した。

一部では、ノーベル平和賞へのノミネートを望む声も上がったが、日本では十分な報道がなかったため知らない人も多い。

ニュージーランドは移民の国で様々な人種が暮らす国だが、

事件後すぐの記者会見でジャシンダ首相は、

「They are us(彼らは私たちである)」と言った。

彼ら、殺されたムスリム=イスラム教徒は、

わたしたち、ニュージーランド国民だと言ったのだ。

そしてこの事件を契機に「銃規制の厳格化」と「被害者への経済的な支援」を即刻行うと公言した。

 

アメリカでは毎日100人が銃で命を落としている

移民の国と言えば、アメリカも同様だが、アメリカでは毎日100人、年間4万人が銃で命を落としている。

3億丁もの銃器を国民が保持する国、アメリカ。

1963年にケネディ大統領が、

1968年にキング牧師が銃で暗殺されている。

ジョン・レノンも1980年に銃で射殺されている。

「イマジン」はジョンのこの世界への最大のメッセージだと思うが、

ジョンの最後は、この歌の歌詞とは真反対の悲惨なものとなった。

オノ・ヨーコは、その後、血塗れになったジョンの眼鏡の写真をネットにアップし、

「銃規制」への必死の訴えを国にし続けているがいまだ実現せず、

アメリカ国内における銃による殺害事件は後をたたない。

愛と平和の世界を創造しようとしている人たちや、

政治と業界の不都合な真実を訴えている人が暗殺されたり、

変死を遂げていることを情報として知っている人も最近は多い。

すべての科学技術は、それを誰が(どのような人)が、

どのように使うかで、悪にも善にもなる。

ジャシンダ首相は、ネット社会の問題となりうる点を国民に伝えながら

一方で、SNSを駆使しながら国民とコミュニケーションをとっている。

 

愛を実践した迅速かつ人道的対応

これまで世界各地で起きたテロ事件が、その国のリーダーの対応によってどのような負の連鎖を生んできたかはいうまでもない。

反する、ジャシンダ首相の思いやりと共感、愛を実践した迅速かつ人道的な対応が、

テロの時代の新しいリーダーシップとして、世界から賞賛されたのだ。

事件の翌日にはスカーフを被り(イスラムの女性のように)

全ての政党の代表と共にムスリムリーダー達を訪問し、ほとんどの時間をムスリムの人たちの話を聴くために時間を使った。

ジャシンダ首相は、一人の人間として、事件直後に、傷つき、悲しみにくれる人たちに最も必要な心に寄り添う対応をしたのである。

被害者の家族を抱きしめる彼女の姿を世界中の人々が目にした。

 

ヘイトを生まない

ジャシンダ首相は、ニュージーランド始まって以来の悲劇と言われたこの事件後、

「ヘイトを生まない」

というメッセージを国民に伝えた。

ヘイトとは、憎しみ、憎悪だ。

国と国の「支配と侵略」「憎悪と復讐心」が戦争を生んでいることは誰もがわかっているが、

地球上から戦争が全くなくなったことは一度もない。

戦争は、国と国だけでなく、人と人との関係性においても起きている。

組織においても、家族の中でも、人は集団を作ると、

支配したり、攻撃したり、排除したり、自分の思い通りにコントロールしたがる人と、

反対に容易にコントロールされてしまう人、権力者に盲目的に従ってしまう人、自分の頭で考えずに権威に従順に従ってしまう人が生まれる。

その人間関係のコントロールドラマ、

国と国の支配と服従のコントロールドラマが、

世界中で連綿と続いてきたのだ。

そこではヘイトー憎しみや反感による分離、分断が容易に生まれる。

「愛と許し」「分離から統合」「自我を超えて」は、

何も精神世界や心理学だけの学びではない。

「対立、葛藤解決、コンフリクト」も会社や組織全般だけの問題ではない。

人は日常、自分が生きている場が、

最大の「愛と許し」「対立・葛藤解決」「分離から統合」

の場になっていることが多い。

前回のブログでも今回のブログでも、私が伝えたいのは、

その長い競争と闘いの人類史を変えるリーダーが出てきたことを共有したかったのだ。

 

ソーシャルメディアの責任

「ヘイトスピーチ」と言う言葉も最近はよく聞く。

主に人種、国籍、性別、障害、職業、外見など、

個人や集団が抱える欠点と思われるものを誹謗・中傷、貶す、差別するなどし、

さらには他人をそのように煽動する発言(書き込み)のことだ。

ジャシンダ首相が言った「ヘイトを生まない」は、

具体的に一貫してテロを起こした容疑者の名前を伏せるという行為を通して表現された。

このような事件をおこすことで有名になりたいという容疑者の名前を一切口にしなかったのだ。

事件はライブ中継されていたが、その動画も共有しないように国民に呼びかけ、

Facebookを始めとするソーシャルメディアへの責任も指摘し、

ソーシャルメディア各社に対し対テロ追加策を求めた。

これは単に容疑者を有名にしないという対応ではない。

襲撃されている映象を見ることや容疑者の名前や情報を知ることは、

人々の心に悲しみや嫌悪感、ひいては復讐心を加熱させ、

ネガティブなエネルギーを拡大させてしまうと判断したからだ。

 

憎しみの連鎖を止める

ジャシンダ首相は、平和で安全なニュージーランドをつくるという明確な目的を持って、

ムスリムの人たちからヘイト心が生まれるのを食い止めようとしたのだ。

そうしなければ、ヘイトがヘイトを生む「負の連鎖」の渦にニュージーランドが飲み込まれてしまうことがわかっていたからだ。

襲撃の映像が繰り返し流れれば、世界のムスリム過激派の感情的反応を加熱させ、

より彼らを団結させるツールとして使われていたであろうし、

リベンジする口実に使われていた可能性もある。

被害者家族や国民も悲劇を繰り返し見ることで容疑者への憎しみを増強させていたはずだ。

容疑者が意図したように有名になることで次の白人過激派を生み出すきっかけになっていたかもしれない。

ジャシンダ首相の想いと行動は、被害を受けたムスリムの人たちに伝わった。

事件から数日後、現地のムスリムの人たちは、

「事件は悲劇的なものだが、人として、犯人を嫌ってはいない、許す」と語ったと言う。

日本語にある「罪を憎んで、人を憎まず」である。

事件後、各地でハカというニュージーランドの先住民であるマオリ族の伝統的な追悼の踊りを学生たちが踊った。

白人の非ムスリムの女性たちがスカーフをかぶり、イスラム教徒への理解と支援をみせた。

 

“They are us”の広がり。

ジャシンダ首相は自分の為ではなく、事件の影響を受けた今最大のケアが注がれるべきムスリムコミュニティの人々を主体とし、

スカーフをまとうことでより、

「私たちはあなたたちと共にいる」

というメッセージを伝えたかったのだ。

ジャシンダ首相の一貫した思いやり、共感、愛、ヒューマニティを前面に出した対応は、

憎しみの感情の連鎖の火消しになったと世界は評価した。

ニュージーランド内のイスラム社会の白人に対する憎悪感情を鎮め、

白人や西洋に対する新たな嫌悪感を抱かせないだけではなく

逆に「ひとつのニュージーランド国民」として皆を団結させたのだ。

「思いやりや愛」を行動規範にする国の代表が、

ましてそれを実践して示せるリーダーがこの世界にどれほど存在するだろうか。

安全で平和で愛と幸福の国ニュージーランドという明確な目的に向けて一貫して行動し、

結果、多様性を尊重し、団結するニュージーランドを見事世界に発信したジャシンダ首相。

コロナ対策での行動力や発信力やコミュニケーション能力の高さが世界中から注目を集めたジャシンダ首相だが、

私はジャシンダ首相がどんな世界を創ろうとし、

そのためにどんな具体的な行動を起こしているのかのプロセスに大いに感銘を受けた。

誰もが幸せになりたいと思いながら生きている。

しかし、ジャシンダ首相はこの国の中にすでにある幸せや豊かさを最大限に尊重し、享受し、

自分の暮らしの中にすでにある幸せや豊かさに感謝して生きることを身を持って伝えている。

その個々人の想いの総和が愛と平和の国を創っていくことを信じているのだということが伝わってくる。

リーダーの意識の次元によって集団、組織、国は変容し、進化ていくが、

前回のブログで伝えた健全な男性性と健全な女性性が統合されたフェミニンリーダーシップ、

あるいはインテグラルリーダーシップは、

新しい世界を創造していく道標となるものだと思う。

そのためには、まずは自分自身が内なる平和を取り戻し、

本来の自分のいのちの輝きを生きる道に歩み出すことだと思う。

私がまずは意識を内側に向ける自己探究から本当の自分を生きる人生が始まると常々言っているのはそういうことなのだ。

本当の自分の愛とパワーとミッションを思い出していくために自己探究はある。

このブログのタイトルを「Power of Being」したのはそういった意図があったからだ。

今地球レベルで、人間の意識の次元上昇が言われているが、

前回、今回のブログで、それがもう始まっていることが少しでも伝われば嬉しい。

参考の過去ブログ

「自分への信頼と自分を愛する心」「人生への信頼と人生を楽しむ心」

歴史はすでに「次の時代」に向かっている。〜魂の暗夜を超えて〜

 


 

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心理カウンセラー、セラピスト、研修講師、作家、東海ホリスティック医学振興会顧問
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