歴史上の偉人、聖人たちは、後世の人たちによって、どんどん神格化され、脚色されていく傾向はどうしてもあるのでしょう。
しかし、当時、身近にいた人たちにとってみたら、
「それ、ちょと違うから」
「そこまでじゃないから」
という部分もたくさんあるのだろうなと私は思います。
女性視点、妻視点から見た、釈迦とソクラテスを描いた、瀬戸内寂聴さんの『釈迦』や、池田晶子さんの『さよならソクラテス』シリーズは、そういう意味でとても面白い本でした。
『さよならソクラテス』シリーズでの妻クサンチッペとソクラテスの会話は実に痛快。
私は、「クサンチッペに1票!」と何度も言いそうになりました。
「クサンチッペ=悪妻説」を池田晶子さんは見事にひっくり返しました。
「もしかして、哲学って面白いの?」
と思わせてくれたという意味で、クサンチッペと池田晶子さんのソクラテスへのリスペクトはすごい。
寂聴さんの『釈迦』は、入魂の仏教小説です。釈迦の魅力と人生を余すことなく描き切っています。
お二人の書かれたものは、もちろんフィクションですから、事実とは全然違う部分も多々あるのでしょうが、物語として面白い。
女性が描く釈迦、妻に語らせるソクラテスは、人間味溢れる一人の男として、二人の存在の芳香が匂い立ち、仏教と哲学の敷居を低くしてくれたように思います。
そう言えば、今日は、お釈迦様のお誕生日です。
仏教徒である寂聴さんの『釈迦』の中には直接こんなことは書かれはいませんが、
凡人の私からしてみたら、色々妄想が膨らみました。
ここから急に文体が変わります。
だって、女房や息子からしてみたら、ある日突然、夫と父親が、家(カピラ城)を出て行ったわけですよ。
しかも、息子は生まれたばかりの赤ん坊だったのですよ。
自分(シッダールタ王子、後の釈迦)だって、母親を生後1週間で亡くして寂しい思いをいっぱいしたでしょうに。
それなのに、ああ、それなのに。
母子共に見捨てられビリーフ(思い込み)ができてしまったとしてもなんら不思議はない家族の状況です。これは家族連鎖ですかね(心理学病(笑))
悟りを開いたからと言って突然帰ってこられても、
「ジョーダンじゃないわよ。勝手なことをして。あなたが出て行った後、私はどんな思いで生まれたばかりの赤ん坊を育ててきたと思っているのよ!」
と妻であるヤショーダラ姫は思わなかったのでしょうか。
息子「ラーフラ」は、生まれたばかりの自分を置いて出て行った父親を一度も恨まなかったのかしら?
父親が付けた自分の名前「ラーフラ」が、なんで「障害」「束縛」という意味なのだろうと混乱しなかったのでしょうか?
「悟りだか、覚醒だか知らんけど、お母さんも俺も捨てて、何が慈悲だ、瞑想だ。修行の道に女・子どもは邪魔者なのかよ!」
と、拗ねて、いじけて、「不良になってやる!」って思わなかったのかしら?
妄想ここで終わり(^。^)
お釈迦様は、シッダールタ王子の時代、城の中でこの世の贅沢を全て味わい尽くすような放恣な生活をしていたとも言われます。
だからこそ、欲望をどれほど追いかけ、満たしても、欲望を満足させて得られる幸福感、満足感はほんの一瞬、束の間に過ぎないことを誰よりもわかっていたのでしょう。
王が従者たちに「シッダールタ王子には、絶対に人間の「老・病・死」を見せてはいけないと隠し続けさせても、
城の外に一歩出てみたら、人間世界の現実ー老、病、死と煩悩に苦しむ衆生がいたわけで、
だからこそ諸行無常のこの世界の背後にある永遠不滅の真理探究の旅ー修行に出たのでしょう。
この世の「快楽」と「苦行」の激しい二極の世界をとことん味わったからこそ説かれた中庸の道。
なんて前置きが長くなりましたが、なんてことはありません。
「このマンガ、めちゃ面白かったよー」
と言いたいだけなのでした。
でも、なんと言っても、あのお釈迦様とキリストのマンガなので、ちょっと勿体ぶっちゃいました。
仏陀というのは、悟った人という意味なだし、キリストは、救世主という意味だから、
本来は、「ゴータマとイエス(ヨシュア)」という方が正解なのでしょうが、
このマンガでは、『仏陀とキリスト』という言い方になっています。
仏陀はすでに『愛のシッダカブッダ』というマンガがベストセラーになっていますから、仏陀の大衆化は土壌があります。
が、しかし、キリストを笑いの土壌にもってくるというのは、けっこう勇気がいることだったのではないでしょうか。
でも、このマンガでキリストに一気に親近感をもった人も多いかもしれません。
私は、21世紀は、組織宗教の教えを超えて、多くの人が、個人で真理探究をする人が増えていくと思っています。
問屋を通さず直接つながりたい、いや、むしろ生命はひとつらなりであるという仏教の説く「縁起」の世界を実感したいという人が増えているように感じます。
何より、量子物理学が今、仏陀が2500年前に悟られた「色即是空」「空即是色」を証明し始めている時代ですから。
「聖☆おにいさん」では、仏陀とイエス・キリストが天上界から下界にバカンスにきて、東京・立川のアパート「松田ハイツ」で下宿生活をはじめるところから始まります。
この設定自体が楽しいではありませんか。
で、仏陀はパンチパーマのお兄さんみたいな髪型で、デブなので、ダイエットに熱心です。
内心、後世の芸術家が自分を下膨れの顔、肥満体形に描いたり、太った仏像を彫ったりしたことに不平・不満をもっています。
「聖☆おにいさん」の中の仏陀の愛読書が、手塚治の「ブッダ」ってとこが笑えます。
そういえば、うちの息子の小学校時代の愛読書は、手塚治の「ブッダ」と「火の鳥」でした。
全巻集めて何度も読んでいました。何が彼をそんなに夢中にさせたのかはいまだ謎ですが。
「聖☆おにいさん」の中での、ブッダとイエスとの共同生活では、お掃除やお料理はもっぱら仏陀の担当です。
イエスはパソコンでブログばっかりやっていてあまり家事をしません。
仏陀が風邪をひいた時は、料理ができないイエスは冷蔵庫に入っているレトルトの「乳粥」ですませようとします。
この「乳粥」というのが笑えますね。スジャータ、スジャータ 。
余計なお世話ですが、私が作者だったら、「サット・チット・アーナンダ」というインコを3羽飼っているという設定にしますね。
イエスはロン毛で、ネット好き。イエスは、SNSもやっていて、足跡によく「ユダさん」がついていることが不安です。
「ユダさん」に友達申請されたらどうしようと思っています。
仏陀もそれについては心配しています。
イエスはマニアックなところがあり、パンツは冷蔵庫で冷やしたものでなければはきません。
生温かいパンツが嫌いなのです。
ミラクル男のイエスに仏陀は言います。
「ねえ、イエス、この水、ぶどう酒に変えてよ」と。
仏陀とイエスは、松田ハイツの近くのハッスル商店街でよくお買い物をするのですが、イケメン風なイエスは、歩いているだけで、女子高生から、「きゃあ、あの人、超ジョニー・ディップに似てるぅ 」って騒がれます。
さて、イエスは、どうやって生活費を稼ごうかいろいろ考え、リクルートのCMに出るのはどうだろうと考えます。
キャッチコピーは、
「30歳で、大工から救世主に転職した男!」
転職を天職に結び付けるところを狙ったりします。
でも、この企画は妄想に終わります。
それでも、どこかの会社に就職しようと履歴書を書きます。
名前は、「聖・イエス」、聖には、セイとルビがふってあります。
「セイ・イエス」って、それじゃあ、チャゲ&飛鳥の歌みたいじゃないですか。
さて、貧乏な二人は、ある日、ハッスル商店街のお祭りで、一位のお米券を狙って、お笑いコンビとしてデビューします。
コンビ名は「パンチとロン毛」です。けっこういい味を出しますが、メジャーデビューするところまではいけません。
二人の極貧ぶりを心配した仏陀の10大弟子の一人、アーナンダが天界からやってきます。
二人が買い物したもので天界の経費で落とせるものがないかどうかいろいろと考えてくれます。
さすが、仏陀に25年もお仕えした従兄弟の愛弟子ですね。
仏陀への献身ぶりが相変わらずすごいのです。
仏陀は、相変わらずの美男子アーナンダを見て、弟子たちの修業時代を思い出します。
教団の婦女子がみんなアーナンダに夢中になり、悟りを目指しているはずのサンガの修行僧たちが、
俗世間のメロドラマさながらに煩悩丸出しで、イケメン・アーナンダの追っかけをしていることに胸を痛めていたことを仏陀は思い出すのです。
悟りに至る三宝も、サンガの質によっては俗世でのメロドラマと変わらぬようで、男女の色欲がやはり最大の修業であることはサンガであろうがシャバであろうが変わらぬもののようです。
アーナンダは、仏陀が寝息も立てずに静かに昼寝しているだけで、仏陀が死んだのではないかと焦りまくります。
で、仏陀に言われます。
「あなたは、まだ私のニルヴァーナ・トラウマがあるのですか。悟ったのではないのですか」と叱られてしょげるとこなぞとてもかわゆいです。
アーナンダが悟ったのは、仏陀の入滅後でしたね。
イエスは、「21世紀の地球は、覚醒の時代だから、再びボクたちのモテ期がやってきたね」とブッダに言います。
ブッダも同意します 。確かにモテ期みたいですね。
仏陀や空海や老子やキリストや、他にも歴史上の聖人、マスターはいっぱいいるけれど、
もし同時代に私も生きていて、目の前に同時にそのマスター達が勢ぞろいしたら、
私はいったい誰の元で修行したいと思うのだろう。
元より言葉では語れないものを、マスター達はどのようにして弟子たちに伝えているのだろー。
その存在、佇まい、眼差し、立ち居振る舞い、溢れているエネルギーを感じたい。
などと再び妄想を膨らませる私(^。^)
「聖☆おにいさん」を5巻一気に読んじゃいました。
けっこう、暇ですね、私も。
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